スペインと日本の間でジャーナリスト、いや人としての幸福を探っているのが彼なのだ。著者の木村浩嗣は2006年から'15年まで雑誌『フットボリスタ』の編集長を務めた人物。その誌面で書かれた50本のエッセイに書き下ろしを加えて上梓されたのがこの本だ。
日本とセビージャの間を行き来し、2つの磁場に挟まれながら、サッカーのゲームについて、指導法について、そして両国の文化について小気味よく語ってゆく本書。冒頭、木村は言う。「住んでみたスペイン5勝5敗PK戦でスペインの勝ち」。だから彼は、スペインに暮らし続ける道を選び、少年チームを率い、セビジャーナス(フラメンコ風の踊り)でセニョーラ&セニョリータをリードし、「guiri」(「外国人」という改まった言い方ではなく、くだけた「外人」の意)として愉快に過ごしている。
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photograph by Wataru Sato