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ベルリンの壁は壊れてドーピングは滅びない。~ベン・ジョンソンの思い出と勝者の巨大な報酬~

2016/02/15

 横浜は日ノ出町、庶民の一角に庶民のホルモン焼き店がある。

『がま親分』。古びた七輪、脂に滑る床、氷を投入しないのにきーんと冷たいホッピー、独立した生き物のごとき内臓肉で知られる。炭火の煙を衣服に付着させて、そのことが幸福な者の集う一軒だ。

 20年ほど前、100mを「9秒79」で駆け抜けた人類がこの場所にやってきた。


 ベン・ジョンソン。

 1988年のソウル五輪の金メダリスト、否、幻の金メダリストである。さっき記録に括弧をつけたのはそのせいだ。大会期間中に筋肉増強剤「スタノゾロール」使用が発覚、優勝の事実と地球規模での敬意は瞬時にして消えた。

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photograph by AFLO

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