それはいずれもバッターの意表を突く、味わい深い変化球だった。カットボールなのに右バッターの外へ逃げるのではなく、懐のボールゾーンからインローいっぱいへ曲がってくる。そしてフォークなのに左バッターの外角低めではなく、高めから落ちてくる――。
7月5日、横浜でのベイスターズ戦。
5対1とタイガースがリードを4点に広げた直後の6回裏、マウンドの藤浪晋太郎は正念場を迎えていた。ワンアウト二、三塁と、ヒット1本でまだまだゲームが荒れる場面。ここで藤浪は右のアーロム・バルディリスをインサイドのカットで、左の倉本寿彦をアウトハイのフォークで、いずれも見逃し三振に仕留めたのだ。155kmのまっすぐを投げられる藤浪が、三振の欲しい場面でまっすぐに頼らないピッチングをする。今年の藤浪の安定感はこういうところからもたらされている。藤浪はこう言っていた。
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photograph by Nanae Suzuki