さすがに意地の悪い質問だったかもしれない。それでも彼はまっすぐにこちらを見て、こう答えてくれた。
「そんなもんだと思いました。結局、自分はそういうものしか持ってないのかなと……そう思いたくなるくらい、これまでにいい思いをしてませんからね」
バファローズのキャッチャー、伊藤光に、「去年、あと少しのところでまたも勝ち切れなかった現実をどう受け止めているのか」と訊いたとき、彼は「持ってない」と言った。伊藤は明徳義塾高校のとき、2年続けて夏の高知県大会決勝で敗れ、2年の夏も3年の夏も、あと一歩のところで甲子園へ出場できなかった。去年も土壇場の直接対決でホークスにサヨナラ負けを喫し、リーグ優勝まであと一歩のところで悔し涙に暮れた。伊藤はその瞬間のことをこう振り返る。
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photograph by NIKKAN SPORTS