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遺伝子研究にゴールはあるのか? ~運動能力との関係性を知る一冊~

2014/11/11

 他の分野に比べ、スポーツの世界では親子鷹といわれる父子の共演を見かけることが多い。だが、コービー・ブライアントを彼たらしめているのは、父ジョー・“ジェリービーン”・ブライアントから受け継いだ遺伝子なのか、試合後の選手控え室に幼少期から出入りし、最高の練習相手が家族にいたからなのかは今までわからない部分だった。運動能力は確かに「遺伝」と「環境」が相互に絡みあって得られる結果だと信じられている。だが、それらが具体的にどの程度干渉しているのか? 本書でD・エプスタインは最新の研究成果を露にする。

マラリアに対抗するための赤血球が速筋線維を生んだ!?

 ジャマイカの最速スプリンターの遺伝子を研究するY・ピツラディスは、北西部にあるトレローニー教区がウサイン・ボルトら多くの有名選手を輩出していることを突き止める。西アフリカからジャマイカに連れて来られた健康で屈強で命知らずの奴隷たちは、スペインとイギリスの覇権争いに乗じて脱走。トレローニー教区近くに「マルーン」という名の戦士たちのコミュニティーをつくった。その戦士社会の末裔が現代最速のスプリンターなのか? 一方、同じジャマイカのスプリンターを研究したP・クーパーは、彼らが奴隷として連れて来られる前の西アフリカで大流行したマラリアに注目。病に対抗するためにできた鎌状赤血球が遺伝子を変異させ、結果的にスプリンターに欠かせない速筋線維を増加させたのではないかと予測する。

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photograph by Wataru Sato

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