#773
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<J連覇を目指すカリスマの流儀> ドラガン・ストイコビッチの励ます言葉。

2011/03/03
就任3年目の昨季、悲願のリーグ王者に輝いた。現役時代も含め、
クラブと共に歩いて11年、名古屋グランパスのすべてを知る若き
名将は、いかなる言葉で最強軍団を作り上げたのか。
今年1月に18年間の現役生活に別れを告げたかつての戦友、
平野孝がその極意に迫った。

 ピクシーことストイコビッチがユーゴスラビアサッカー協会の会長をしていた頃、東京にある日本料理屋で、器用に箸を使い納豆を食べながら、「いつかグランパスの監督になる」と、静かにそして熱く語っていたのを昨日のことのように覚えている。

 宮崎県の新燃岳噴火による影響で、多くのチームがキャンプ地変更を余儀なくされたなか、幸い影響のなかったグランパスのキャンプ地、別府へ向かった。

 ベンチコートに身を包み、ゆっくりとした足取りで選手を見つめるその姿からは、現役時代の面影は鳴りを潜め、その分、監督としての風格のようなものが漂っていた。

「タカシ!」。僕を見つけて近寄って来ると、再会を喜び抱き合った。現役時代、ピクシーがゴールを決めるとよく抱擁をしていたが、その頃より少しふくよかになっていた身体も、監督としての貫禄と勝手に解釈した。

 グランパスで一緒にプレーしていた7年間は学ぶことだらけの毎日で、とても充実した日々を過ごせた。あのタイミングでピクシーと出会えたことで、よりサッカーの楽しさを知り得たし、18年間という長いキャリアを築けた理由のひとつにもなった。

 そのピクシーに練習終了後、話を聞いた。

――まずは初のタイトル獲得、おめでとう。

「ありがとう。現役時代に優勝したときはみんなではしゃぎ、時間をかけて喜び合えたけど、監督になると喜びに浸れる時間は短い。ただ、深い満足感はある。日々の練習をこなしながら、選手たちが私のビジョンを理解し、実践してくれたことがとても重要だった。それが昨シーズンのタイトル獲得に結びついたと改めて感じている」

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photograph by Tatsuya Nakayama

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