多大な期待を背に受けて、未知の世界へと飛び込む大型新人。
復活を期すベテラン、そしてチーム変革を託された新指揮官。
新たな舞台で戦いを開始する、挑戦者たちの姿を追った。
一人のルーキーの存在が、チームに活気と緊張感をもたらす。そんな例は過去にもずいぶんあった。今季、各球団に入団した新戦力は、果たしてそうした効果をもたらすことができるのか。彼らの姿を中心に追ったキャンプ地巡りの旅は、例年通り、昨年日本一に輝いた巨人の宮崎から始まった。
巨人が好きで、他球団の指名を2度も蹴って入団した長野久義は、強力外野陣相手にレギュラー争いを挑んでいる。紅白戦で、打った球が不思議と野手と野手の間を抜けていく打撃を見て感じたのは、他の選手にはない“強さ”だった。そんな長野に敏感に反応していたのがライバルたちである。
故障明けのベテラン・高橋由伸が今までの外野ではなく一塁の守備練習を始める姿に、「お手並み拝見」と高みの見物を決め込んでいた連中も、長野の持つ“何か”を脅威に感じ始めているのは確かだ。あくまで平静を装う亀井義行は別にして、昨年の新人王・松本哲也は目つきが変わっていた。松本は言う。
「(社会人で)優勝を経験した人とそうでない人の差でしょうか」
チームに溶け込んだ西武・雄星はマイペースで調整。
宮崎市内から車で1時間半。今年ほど足繁く西武のキャンプ地・南郷に通ったことはなかった。もちろん目当ては菊池雄星だ。
第2グラウンドに向かう強烈な急階段を下ると、ブルペンの隣で涌井秀章らと共に、雄星が潮崎哲也コーチの100本連続捕球ノックを受けていた。
投手5人が順番にノックを受け、100球連続で捕球すれば終わりなのだが、捕れそうで捕れないところにノックされた打球を、雄星はグラブに当ててエラーしてしまう。そのたびに最初の1球からやり直し。全員が上がれない。捕球に失敗した雄星に涌井が言った。
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