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「100%を目標にせず、70~80%をいかに維持できるか…」西岡良仁×坂井利彰JTA常務理事が語った、世界で戦うために必要なこと

posted2026/10/16 11:00

 
「100%を目標にせず、70~80%をいかに維持できるか…」西岡良仁×坂井利彰JTA常務理事が語った、世界で戦うために必要なこと<Number Web> photograph by Shiro Miyake

プロテニスプレイヤー西岡良仁(右)と坂井利彰JTA常務理事が、TENTIAL提供のリカバリールームで対談を実施

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福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

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Shiro Miyake

9月28日から10月6日まで東京・有明で開催された「木下グループジャパンオープンテニスチャンピオンシップス2026(以下、ジャパンオープンテニス)」。コンディショニングブランドを展開するTENTIAL(テンシャル)では、昨年の大会に続き、出場選手のコンディションを整えるリカバリールームを提供。多くの選手が活用した。

次の世代に伝えたい、コンディショニングの大切さについて、プロテニスプレーヤー西岡良仁と、日本テニス協会でジャパンオープンテニスの運営を担当する坂井利彰常務理事が語り合った。

コンディショニングに対する捉え方

――どのスポーツでもコンディショニングは大切だと思いますが、西岡選手が普段、コンディショニングで意識していることを教えてください。

西岡 テニスは、1月から12月の中旬までがシーズンで、ほぼ1年中、どこかで大会が行われています。しかも、開催地もヨーロッパ、アジア、アメリカと世界各地に散らばっています。自分が出場する大会に合わせて、違う大陸、違う国に行くことになるので、気候も違えば、標高も変わってきます。さらにトーナメントの組み合わせによっては、開催地に到着した翌日にすぐ試合ということもあります。なので、まずは移動で疲れないようにすることがすごく大切です。その上でいかに早く回復できるか。そこが勝負です。

坂井 日本人選手の場合、日本に帰ってきて、またヨーロッパ、アメリカに行くことになるので、時差もあるし、長時間のフライトによる疲れもあります。その中でどうやってコンディションを作っていくかはとても難しいですよね。しかも、西岡選手は個人のランキングを上げていくというツアーでの戦いだけではなく、日本代表としてデビスカップの試合にも出場しています。コンディショニングやリカバリーについて、しっかりとした考えがあるからこそ、31歳の今もトッププレーヤーの一人として、プレーができているんでしょうね。

西岡 シーズンを通して、「今日は調子が良くて、100%の状態で戦える」と感じられる試合は、多くても1、2試合しかありません。長いシーズンを戦うためには、100%を目標にするのではなく、逆に50%の日を作らず、及第点のプレーができる70、80%のコンディションをいかに維持できるかの方が大切だと思っています。

坂井 西岡選手は18歳でプロに転向して、わずか4年で世界ランキング58位まで上がってきました。本当にものすごいパフォーマンスだったんですけど、体には負担がかかっていたと思います。左膝前十字靱帯断裂という大怪我に見舞われました。その後、怪我を克服して、またそこからランキングを上げて、2023年には24位にまで到達しますが、コンディショニングを大切にするようになったのはやはりこのときの怪我があったからですか?

西岡 怪我をしたのは21歳のときですが、20代前半というのは、試合をしても寝たら疲れが回復する年代ですよね。多少の疲れがあっても、頑張れちゃうんです。しかも、テニスは勝つと、試合がどんどん続いていくし、ランキングが上がっていくから、休養したいよりも、大会に出たい、試合をしたいという気持ちが勝つんです。実は怪我をした大会も本当は出場しないつもりだったんです。それがエントリーしたら予選ではなく、本戦からの出場になったので、じゃあ出場しようとなって……。それまでは自分が大怪我をするというイメージがなくて、怪我をするとしてもせいぜい骨折とか疲労骨折くらいだろうと甘く考えていました。本当に経験不足だったと思います。リカバリーについても知識があれば、もしかしたらあの怪我は防ぐことができたかもしれません。だからこそ、今の選手たちには、若いうちからコンディショニングの大切さをしっかりと理解してほしいです。

坂井 海外では身長190cmを超えるような大柄な選手たちが多い中で、170cmの西岡選手が勝ち上がってこられたのも、コンディショニングのことをしっかりと考えているからこそだと思います。日本テニス協会としても選手たち、特にジュニア世代の選手のコンディショニングを支える環境を整えていこうとしている中で、こういう意識が高い選手がいるというのは、本当に日本テニス界にとって大きな宝だと感じました。

西岡 僕らが走り回ってなんとかラリーで稼いだ1点が、パワーのある海外の選手だとサービスエース1本で返されてしまいます。この残酷さがテニスの面白いところであると思うんですけど(笑)、そこをなんとか生き抜くためには、コンディションを維持して、試合に出続けるしかないんです。やっぱり怪我なく戦っている選手の方が、ランキングは上がっていくので。逆に体の大きな海外の選手たちは、コンディショニングについてはあまり細かく考えていない人が多い気がします。むしろ、世の中でヨガやピラティスが流行っているように、一般の人の方がコンディショニングへの意識が高いかもしれません。身長やパワーで負けている分、日本の選手たちはコンディショニングを先取りして、今のうちに当たり前にしていくことが、今後世界で戦える選手を育てていくためにはすごく重要だし、そこにもっと力を入れてもいいのかもしれません。

リカバリールームが与える選手への影響

――昨年に続きジャパンオープンでは、TENTIALが提供する、選手のためのリカバリールームが設けられています。こういったリカバリールームがあることは選手のプレーにどのような影響があるでしょうか。

西岡 選手にとってはすごくプラスだと思います。テニスの試合ってゲーム展開によって試合時間が変わるので、その日の第1試合以外は、自分が何時にコートに立つか正確な時間がわからない。選手たちは何時に試合が始まるのか最速の時間を考えて、準備をします。でも、2、3時間遅れることはざらにあります。そうなると、やることがない(笑)。最近ようやく、海外でも選手が休憩をとれるようなスペースを設ける大会が増えてきて、グランドスラムでも選手が体を休めることができるリクライニングチェアを置いた「クワイエットルーム(静音室)」が作られていますが、ジャパンオープンテニスのリカバリールームのような選手のコンディショニングに特化した施設は、他の大会では見たことがありません。

坂井 私はこの大会のトーナメントレップ(現場責任者)を務めていますが、昨年、TENTIALさんから「選手専用のリカバリールームを作りたい」というお話を伺ったときに、どういうものができるのか想像ができなかったんです。それが、実際にできてみると、周りの視線を遮断できる個別ブースがあったり、試合前に仮眠がとれるベッドが用意されていたりと、選手のコンディショニングをサポートできる環境が整っていて、本当にびっくりしました。

 ジャパンオープンテニスは、ATP(男子プロテニス協会)ツアーで「ATP500」というグレードの大会になります。我々はこのATP500でトーナメントオブザイヤーを目指していまして、選手からの評価がものすごく大切になります。昨年はリカバリールームを利用した選手からのアンケートで、91.7%が最高評価を回答してくれています。こういう施設があることで、選手の負担をすごく減らすことができると思っているのですが、選手の立場からするとこういう施設があることで、大会へのモチベーションや評価というのは変わるものですか?

西岡 そうですね。もちろん大会としては日本人選手が勝つのが、喜ばしいことではあると思いますけど、それと同時に世界的に有名な選手たちがベストな状態でプレーすることを観客の皆さんも求めていると思うので、それを最大限サポートできるというのは、大会としてとても意義があることですよね。選手としても、リカバリールームが用意されていてコンディションを整えることができるとなると、またこの大会に出場したいという気持ちになるのは当然ですよね。大会としては良い選手を集めることができる。選手としてはシーズン終盤に向けていい状態がキープできる。まさにWin-Winの関係ができていると思います。

坂井 実際にジャパンオープンテニスと同じ週に北京で「チャイナ・オープン」が開催されていますが、カットオフ(予選なしで本戦に出場できる選手の最低ランキング)は、東京が38位、北京が55位くらいとなっているように、多くの選手に東京に行きたいと思ってもらえている証拠だと考えています。

 まさにこういう環境というのは日本の文化とおもてなしが凝縮された空間だと思うので、選手、そしてTENTIAL様とも一緒にどんどんいい大会を作っていきたいなというふうに感じているところです。

TENTIAL株主として伴走する理由

――西岡選手はTENTIALさんとの関係が深くて、2020年に出資をして株主になっているそうですね。これは怪我をしてコンディショニングを深く考えるようになったことと、関係があるのでしょうか。

西岡 実は怪我とTENTIALの株主になったことは全然関係がないんです。今でこそコンディショニングというとTENTIALとなっていますが、2020年頃はシューズのインソールがメインで、立ち仕事の多い医療従事者や介護従事者の負担を軽減し、足元から支えていく事業を展開していました。だからテニスでTENTIALと関わることになるとは、全く想像していませんでした(笑)。

 今は遠征先でもコンディションを整えるために「テックスウェット」や「BAKUNE」を使用していますし、テニスウエアについてはひねる動作が多いのでそういった体の動きにはどんな素材が適しているのか、また気候に合わせて暑い時期にはこういう機能がほしいといった要望を出しながら、共同で開発しています。実は昨年リカバリールームを作るにあたっても、海外の大会のクワイエットルームの写真を送ってイメージを伝えたり、アイデアを出したりということもやっています。

――最初に出資をしてから6年以上も関係が続いていますが、これほど長く継続しているのにはどういう理由があるのでしょうか。

西岡 日常のコンディショニングを支えるワーク/ライフスタイルウエアや睡眠時のリカバリーをサポートする「BAKUNE」シリーズのリカバリーウェアにしても、機能性だけではなく、着心地もよかったりと、良いものをしっかり提供しているのがTENTIALの特長だと思います。そういうものづくりに真摯に向き合っているところに共感しているからこそ、ずっと継続しているというところが大きいです。僕自身も、知人とかに勧めることもよくありますが、自信を持ってお勧めできる。実際にテニス界に限らず、プロ野球選手など他の競技のアスリートや一般の方にもTENTIALがすごく広がっているのも、品質の高さだけではなく企業としての姿勢に共感してもらえているからではないでしょうか。

――坂井さんはTENTIALのようなコンディショニングやリカバリーを強みとする企業がテニス界をサポートしていることについてどのように感じていますか。

坂井 ここ数年は気候の変化もあって、夏場の暑さ対策は大きな課題となっています。特にジュニア世代では暑さのために、屋外で練習ができないといった問題も起こっています。若い世代の育成のためにも、TENTIALさんのような企業としっかりとパートナーシップを組んで、少しでもスポーツを快適にできる環境を、作っていきたいと考えています。TENTIALという社名はポテンシャルに由来していると聞いていますので、コンディショニングの面でのポテンシャルを存分に発揮してもらいたいです(笑)。

世界を目指すジュニアへ伝えたいこと

――最後に、西岡選手のように世界の舞台で戦うことを夢見ているジュニア世代の選手たちに伝えたいこと、メッセージをお願いします。

西岡 昔に比べて今は、コンディショニングについての情報を手軽に手に入れることができるようになっています。メジャーリーグで活躍する選手が10時間以上睡眠をとっていますというのであれば、寝やすい環境を作ってしっかり睡眠をとった方がいいでしょうし、栄養学とかも知っておくべきだと思います。

 ただ、ジュニア世代だと本人というよりもコーチや両親からのアドバイスがやはり重要ですので、選手を育成する立場にある大人たちが、正しい知識を身につけて、正しい情報を子どもたちに伝えるようにしてほしいです。

坂井 私自身も、日本テニス協会の活動の中で、育成に関わっている大人の一人として、世界で戦う選手を育てる責任を強く感じています。今回、西岡選手が話してくれたコンディショニングの大切さも、こうしたリカバリールームのように選手のコンディションを整える環境づくりも、しっかりと次の世代に伝えていきたいと思います。

 そして、こうした環境づくりを当たり前にしていくことが、これからの日本テニス界を強くしていくのだと思っています。だからこそ、コンディショニングを強みとするTENTIALさんのような企業とともに、選手を支える環境を一歩ずつ前へ進めていきたい。世界の扉を開くのは、才能だけではなく、その才能を支える土台です。選手たちが安心してコンディションを整え、全力で戦える場を、これからも作っていきたい。その積み重ねが、いつか必ず日本のテニスを次のステージへ押し上げると信じています。

坂井 利彰さかい・としあき

1974年4月9日生、東京都出身。慶應義塾大学在学時に全日本学生テニス選手権シングルスを制し、社会人を経てプロに転向、全豪オープンにも出場した。引退後は母校・慶應義塾大学庭球部の監督(2006~2024年)として、男子を46年ぶり、女子を55年ぶりの全日本大学王座に導く。現在は同大学体育研究所教授を務める傍ら、日本テニス協会常務理事としてジャパンオープンの大会運営本部長を務める。父は元プロテニス選手の坂井利郎。

 

西岡 良仁にしおか・よしひと

1995年9月27日生、三重県津市出身。身長170cm、体重64kgのサウスポー。2014年プロ転向。21歳で左膝前十字靱帯を断裂する大怪我を負うも復活し、ATPツアーでシングルス3勝を挙げる。2023年には自己最高の世界ランキング24位を記録し、同年の全豪オープンと全仏オープンで4回戦に進出。世界を転戦しながら、日本代表としてデビスカップにも出場している。TENTIALには2020年に出資し、株主としても関わる。

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