濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
平本蓮のRIZIN復帰戦勝利は“疑惑の判定”だったのか? SNS大荒れ、敗者ダウトベックは「負けたと思ってない」 批判のウラに“2つの誤解”
text by

橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2026/09/16 11:04
1ラウンド、平本蓮の顔面を捉えたダウトベックの左パンチ
筆者の採点は29-28でダウトベック。勝敗が決した瞬間はプレスルームの記者たちもどよめいていた。筆者のように考えた記者が何人もいたのだろう。ただ平本の勝ちという結果にも、それはそれで不満はない。そういう見方もあるだろう、と思える。
判定議論のウラに「2つの誤解」
SNSの紛糾は、平本にアンチが多いこととも関係しているだろう。平本は毒舌もあって好き嫌いが分かれるタイプだ。それだけに「判定がおかしい」というのが格好の批判の材料になった。
ただ、前提を踏まえていない批判もあったようだ。前提の一つは、RIZINの競技運営は外部機関であるJMOC(ジェイモック=一般社団法人日本MMA審判機構)に委託されているということ。SNSでRIZINのスタッフにクレームをつけているファンも多かったが、これはお門違いというしかない。
ADVERTISEMENT
もう一つの前提は、今年からRIZINの判定方法が変更されていること。5分3ラウンド制なのは同じだが、昨年までは試合全体を見て勝敗をつける「トータルマスト」での採点だった。しかし今年からは「デュアルマスト」と呼ばれる2段階の採点法になっている。第1段階はラウンドマスト。ボクシングと同じようにラウンドごとに10点法で採点していく。この結果が引き分けだった場合、第2段階としてトータルマスト、つまり1-3ラウンド全体の評価で優劣をつける。
平本も、セコンドから2ラウンド、3ラウンドを取っているから大丈夫だと言われたそうだ。トータルマストではなく、ラウンドマストゆえの勝利。昨年までの判定と同じ感覚で「ダウトベックのほうが攻めてただろ」と思うと、ここを見誤る。
ダウトベックのテイクダウンは“アピール”?
試合全体を見れば、1ラウンドのニアダウンが最もダメージのあった攻撃だ。トータルマスト判定なら、ダウトベック勝利で問題はない。ただラウンドごとに切り取った優劣ではそうならないこともある。1ラウンドは“明確に”ダウトベック。3ラウンドは“微妙に”平本。それでもどちらも10-9なのだ(1ラウンドは10-8が妥当ではないかという議論もあるが)。
またRIZINの採点基準で最も重視されるのはダメージであり、ベースとなるのはフィニッシュに向かう姿勢。KO、一本を狙っているかどうかが問われる。その意味で、ダウトベックの3ラウンドのテイクダウンには疑問符がつくという声も。筆者はテイクダウンして殴りにいったことを評価したが、違う見方も成り立つ。
RIZINのCEOである榊原信行は、ダウトベックのテイクダウンについて「ディフェンシブな、エスケープ的なテイクダウンはまったくポイントにならないんです」と見解を示した。
「打撃で押されて、それが苦しくなってグラウンドに逃げたっていうふうに取られたんだろうなって」
テイクダウンはそれ自体が攻撃であって「ディフェンシブなテイクダウン」とはどういうものだろうと筆者は思うのだが、それも一つの見方ではある。「そんな見方はおかしい」というのは今回の採点への批判ではなく“採点基準見直しの提案”に類するものだろう。



