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鬼才ニューウェイと風洞施設を手に入れ鼻息荒いアストンマーティンは新レギュレーションの来季、トップチームに肩を並べられるか
posted2025/08/06 11:00
ウィリアムズ、マクラーレン、レッドブル、数々のチャンピオンマシンをデザインしてきたニューウェイは12月には67歳になる
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尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
イギリスGPが開幕する前日の7月3日、その舞台となるシルバーストン・サーキットからわずか200mの場所に本拠地を構えるアストンマーティンが、メディアを招待して新しいファクトリー内に新たに建設した風洞施設の完成を共に祝うパーティを催した。
チーム代表のアンディ・コーウェルはパーティの冒頭、次のようにあいさつした。
「今年初頭から自社製の風洞施設が稼働した。24時間365日利用可能な自社製の風洞施設を持つことは、この世界では大きな違いを生む。これを手に入れたことで、われわれはゲームチェンジャーになる資格を得た」
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空気の流れを利用してマシンを地面に押し付けるダウンフォースをいかに得るのか? 現在のF1マシン開発の肝はズバリここにある。そのため、どのチームの開発も風洞施設で行われている。
F1の風洞施設は大型のファンで人工的に空気を送り出し、試験部と呼ばれるエリアに60%サイズのモデルカーを置き、モデルカーやその周囲の空気の動きを精密に測定するための施設だ。
現在、2つのチャンピオンシップでライバルを大きく引き離してトップに君臨するマクラーレンは、2023年に完成させた風洞施設を手に入れてから急速に力をつけてきた。
追い風となるレギュレーション変更
アストンマーティンの前身であるレーシング・ポイントは、フォース・インディア時代からこのチームの源であるジョーダンのファクトリーを使用してきた。この間、一度も風洞施設を所有したことはなく、最近はメルセデスが所有していた風洞施設をレンタルしてマシンを開発していた。
「これまでは実験するパーツの製作が始まったらメルセデスに連絡して何日も先の予約を入れ、決められた日にモデルカーをバンに積んで空力エンジニアたちと一緒に移動していた。バンを降りたとき、モデルカーが壊れていないかを真っ先に確認していたよ。これからはもうそんな心配はいらない」(アストンマーティン・エンジニア)
来季のF1には、パワーユニットだけでなく車体に関しても大幅に変更された新しいレギュレーションが導入される。そのタイミングで新しい風洞施設を完成させたアストンマーティンが、トップチームと肩を並べようと鼻息を荒くするのも当然だ。

