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「表彰台に嫌われた男」37歳のベテラン、ニコ・ヒュルケンベルグがF1キャリア初の3位獲得「シャンパンファイトのやり方は忘れてなかった」
posted2025/07/08 17:00

キャリア初の表彰台で、満面の笑みを浮かべて歓声に応えるヒュルケンベルグ
text by

尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
37歳のベテランが、第12戦イギリスGPでついにF1の表彰台に上がった。
ニコ・ヒュルケンベルグ(キック・ザウバー)のF1人生は不運の連続だった。これまでレギュラードライバーとして戦った14シーズンでの自己最高位は4位。2013年の韓国GP、12年と16年のベルギーGPだ。その後も表彰台に近づくことができず、付いたあだ名が「表彰台に嫌われた男」だった。
そのヒュルケンベルグに最大のチャンスが訪れたのは19年のドイツGPだ。レースは途中で大雨に見舞われ、トップランナーが次々とアクシデントに見舞われる大混乱の展開となる。レース中盤にセーフティーカーが出動したとき、ヒュルケンベルグはトップのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に続いて2番手につけていた。しかし、レースが再開されるとヒュルケンベルグのペースは伸びず、バルテリ・ボッタスとルイス・ハミルトンのメルセデス勢に相次いでかわされ4番手に後退。その後、雨に足をすくわれクラッシュし、リタイアに終わった。
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そのレースをヒュルケンベルグはこう言って悔しがった。
「自分への怒りと、チームとルノーに対する申し訳ない気持ちでいっぱいで、言葉にならない。今日は最大のチャンスだったのに、こんな終わり方になって本当にガッカリしている。母国の観衆が応援してくれていただけに、僕の心のダメージは大きい。明日はもっと傷が深くなっているような気がする」
最後方スタートからの快進撃
今年のイギリスGPも、6年前と同じ雨の中でレースがスタートした。しかも、ヒュルケンベルグは予選は19番手に終わり、最下位のフランコ・コラピント(アルピーヌ)がピットレーンスタートとなったため、グリッド最後方からのスタートとなった。
しかし、1周目に11番手まで浮上したことでチャンスが一気に広がる。さらにライバル勢より早めにピットインしてインターミディエイトタイヤを新品に交換したことで、ヒュルケンベルグは13周目には5番手、21周目には4番手まで浮上した。
34周目にはランス・ストロール(アストンマーティン)をかわして、ついに3番手に。ここで後方からハミルトン(フェラーリ)が迫ってくる。6年前はハミルトンに抜かれた後、コースアウトしたという苦い思い出があった。