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川崎をEnergy創発特区へ ― MKKプロジェクト始まる。[2030年、川崎新アリーナシティを世界最先端の環境先進アリーナへ]

posted2025/07/03 11:00

 
川崎をEnergy創発特区へ ― MKKプロジェクト始まる。[2030年、川崎新アリーナシティを世界最先端の環境先進アリーナへ]<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

(左から)元沢伸夫・株式会社DeNA川崎ブレイブサンダース取締役会長、林安秀・三菱化工機株式会社常務執行役員

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福田剛

福田剛Tsuyoshi Fukuda

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Kiichi Matsumoto

2030年の開業を目指す川崎新アリーナシティ。協業する三菱化工機の林常務執行役員と川崎ブレイブサンダースの元沢会長が想いを語った。

――2030年の開業を予定している「川崎新!アリーナシティ・プロジェクト」でBリーグに所属するバスケットボールクラブ、川崎ブレイブサンダースとの協業を進めている三菱化工機では、今期から「MKKプロジェクト」という新たな取り組みをスタートさせたとお聞きしています。最初にMKKプロジェクトについて教えてください。

 2035年に100周年を迎える三菱化工機は、「持続可能な発展に挑戦し、快適な社会を実現する」というビジョンのもと全社一丸となってさまざまな取り組みを進めています。その中で、今の取り組みのさらに先を見据え、顕在化していないニーズや市場に対し、自分たちの環境対応・創エネルギー技術を活用することで既存のビジネスやサービスと差異化しつつ、新たなかつ具体的なビジネスモデルをパートナーとともにデザインする、それが「MKKプロジェクト」です。

――川崎新!アリーナシティ・プロジェクトへの参加を決めたのにはどういう意図があったのでしょうか。

 ここ数年、日本では各地で新たなスタジアム、アリーナ建設が進められています。多くの施設で環境に配慮した工夫がされていますが、この新アリーナでは、アリーナで出た食べ残しなどを施設内でエネルギー化の原料として循環させる、あるいは植物工場を設置し、CO2は葉物育成に、水はろ過して循環させるなどの工夫を通して、CO2ニュートラル、あるいはCO2マイナスな世界最先端の環境にやさしいアリーナを目指しましょう、と元沢さんに声をかけさせていただきました。

元沢 アリーナの照明には大量の電力を必要とします。その電力がCO2を排出してつくられたものだとしたら、地球環境に優しいとは言えません。川崎ブレイブサンダースのホームとなる新アリーナの建設を進めている我々としても、せっかくなら環境に優しいアリーナを様々な最先端かつ継続性のある取り組みにより、実現したいという想いを持って検討を進めていました。そんなときに林さんからご連絡をいただき、三菱化工機さんの工場を見学させてもらいました。この技術力を導入できれば世界最先端の環境先進アリーナに向けた一つのピースが埋まるのではと、興奮したのを覚えています。

川崎から世界へ! 三菱化工機の挑戦。

 三菱化工機は川崎で創業した企業ですから、地元に誕生するアリーナ建設をバックアップしたいという想いもありましたし、何よりもこのアリーナが実現すればMKKプロジェクトが目指している「カワサキ発の社会課題解決ソリューション」に繋がります。

 我々の技術があればクリーンエネルギーである水素を使ってCO2を出さずにアリーナの電力を供給できます。しかも、その水素もバイオガスなど自然由来のグリーン水素であれば、地球環境にかかる負担を軽減できます。その他にも、三菱化工機が注目しているフードテックで生産した果物や野菜をレストランの食材にすることで、電力以外の部分でもCO2を削減したり、さらにその先には、これまでは焼却や埋め立て処理されていたゴミから水素を生み出す、完全循環型アリーナも見据えています。

元沢 林さんとお話をしているといろいろなアイデアが出てくるのですごく楽しいです。2030年の開業を目指していますが、そこで終わりではなく、環境技術の進化に合わせて、アリーナもさらに進化させていきたいですね。

――世界最先端の技術を使ったクリーンなアリーナが川崎に誕生することになりますが、チームにはどのような影響があるのでしょうか。

元沢 アリーナを運営する我々としては、世界中の人に足を運んでもらって、川崎から世界に新アリーナの技術が広がることを期待しています。選手としても世界が注目するアリーナをホームに持つ川崎ブレイブサンダースに所属していることに誇りを感じるでしょうし、このアリーナでプレーしたいという選手が増えることで、チームの強化にも繋がると考えています。

 川崎ブレイブサンダースが盛り上がると、応援している僕らも、もっとエネルギー効率を上げようとモチベーションが上がりますし、何よりも川崎の街全体に大きなエネルギーを生み出すと思うんです。元々川崎はブレイキンの聖地と呼ばれているように、若い力が溢れる街でもあります。新アリーナがそのエネルギーの中心地になると嬉しいですね。

元沢 そうですね。バスケに限らず、ダンスでも音楽でも、川崎のカルチャーがここから生まれる。そんなアリーナにしていきたいです。

――開業までの数年間は、お二人にとってどんな期間になりそうですか?

元沢 これから開業に向けてさまざまなイベントや実証実験がスタートします。川崎に住んでいる人に限らず、働きに来ているとか、友人が住んでいるとか、少しでも川崎に関わりのある人はぜひ参加いただいて、一緒に楽しみながら開業までの期間を過ごしてもらえると嬉しいです。

 徐々にプレッシャーを感じ始めていますが、そのプレッシャーを力に変えながら、三菱化工機としてさらに技術力を高め、新アリーナ、そして地球環境に優しい世界の実現に繋げていきたいです。

2050年のカーボンニュートラル時代に向けた新たな挑戦

田中利一 三菱化工機株式会社代表取締役 社長執行役員 1985年、三菱化工機に入社。取締役管理本部長などを経て、2021年、取締役社長に就任田中利一 三菱化工機株式会社代表取締役 社長執行役員 1985年、三菱化工機に入社。取締役管理本部長などを経て、2021年、取締役社長に就任

 三菱化工機は川崎で創業し、日本の化学工業の発展と関わりを持ちながら、産業機械、石油、水素など、多岐にわたる領域で時代のニーズに合わせた装置・設備の設計、製作を請負い、実績を残してきました。

 しかし、今、時代は大きく変わろうとしています。その変化に対応するためにカーボンニュートラル時代に向け三菱化工機としてあるべき姿を描いた「三菱化工機グループ2050経営ビジョン」を2021年に策定、「持続可能な発展に挑戦し、快適な社会を実現」を掲げ、「水素を核としたクリーンエネルギー事業」など、4つの事業領域を展開し、進化と変革を進めてきました。これからはこの4年間で築き上げた土台から大きく羽ばたく期間になると考えています。MKKプロジェクトもその1つです。2035年には創業100年を迎えます。次の時代に向けて、三菱化工機はこれからも挑戦を続けていきます。

2027年にリニューアル予定の新本社・川崎製作所。工場実験棟は環境に配慮した最先端工場をコンセプトに省エネや脱炭素化をリードする拠点に生まれ変わる2027年にリニューアル予定の新本社・川崎製作所。工場実験棟は環境に配慮した最先端工場をコンセプトに省エネや脱炭素化をリードする拠点に生まれ変わる

MKKプロジェクトへ高まる期待
Road to the World from Kawasaki

進化と変革に挑む三菱化工機が進めるMKKプロジェクト。協業を進めるDeNA、川崎市から届いたメッセージを紹介。

南場智子 株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役会長 1999年、DeNAを設立。代表取締役社長を経て、2017年より現職南場智子 株式会社ディー・エヌ・エー代表取締役会長 1999年、DeNAを設立。代表取締役社長を経て、2017年より現職
共に川崎から世界へ!

MKKプロジェクトの発足、誠におめでとうございます。DeNA川崎ブレイブサンダースを通じ、未来の川崎に向けて協働させていただけることを大変嬉しく思います。DeNAグループも「川崎から世界へ、世界から川崎へ」を掲げ、アリーナシティ開発プロジェクトを推進しております。同じ志のもと、これからも共に歩んで参りたく存じます。

福田紀彦 川崎市長 2013年、川崎市長に初当選。'21年史上最多得票で3選を果たす福田紀彦 川崎市長 2013年、川崎市長に初当選。'21年史上最多得票で3選を果たす
環境先進アリーナに期待!

MKKプロジェクトの発足、おめでとうございます。川崎から世界に向けた環境先進アリーナに大きな期待をしています。脱炭素や資源循環、生物多様性など、持続可能な社会の実現に向け、三菱化工機様をはじめ様々なステークホルダーとともに、まちづくりのパートナーとして連携しながら、世界モデルとなるアリーナシティを創っていきたいと思います。

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