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「史上最高の右打者は落合だ」野村克也は、なぜ落合博満を認めたのか? “ID野球”も“オレ流”も知る4人の教え子が語る「ウラの顔」 

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長谷川晶一

長谷川晶一Shoichi Hasegawa

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photograph byKoji Asakura,Tamon Matsuzono

posted2024/02/11 11:04

「史上最高の右打者は落合だ」野村克也は、なぜ落合博満を認めたのか? “ID野球”も“オレ流”も知る4人の教え子が語る「ウラの顔」<Number Web> photograph by Koji Asakura,Tamon Matsuzono

野村克也と落合博満、どちらとも関係がある4名の野球人が“似て非なる名将”の残像を語った

 落合が中日監督に就任した2004年シーズン、開幕投手を務めたのが川崎憲次郎だった。故障のために過去3年間、一度も一軍登板経験のなかった川崎に落合はこだわった。その年の新春のことだ。

「突然、落合さんから電話がありました。『開幕はお前で行く。どうだ、やれるか?』と言われました」

 このとき、落合はこんな言葉を続けた。

「これはオレとお前だけしか知らないから。誰にも言うなよ」

 それ以降、落合は徹底的に開幕投手を秘した。マスコミはもちろん、自らを支える鈴木孝政投手チーフコーチにさえも、開幕を誰に託すのかを伏せ続けたのだ。

「森繁さん(森繁和一軍投手コーチ)はもちろん知っていました。でも、他の人は誰も知らなかった。ずっと隠し続けるのは心苦しかったですよ」

「気まずくて、トイレ行くふりして逃げた」

 開幕直前の選手ロッカー――。ベテランの山本昌が「一体、誰が開幕投手なんだ?」と投手陣全員に尋ねた。

「昌さんが『憲次郎、お前か?』と言うから『まさか、僕のはずがないじゃないですか』と笑ってごまかしました。その場は、『そりゃあそうだよな』となったので助かったけど、すごく気まずかったので、そのままトイレに行くふりをして逃げました」

 迎えた開幕戦。川崎は2回途中5失点で降板も、打線が奮起して逆転勝ち。落合は監督としての初陣を白星で飾った。

【次ページ】 野村がバラした「イチロー対策」

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