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「全部が倒せるパンチなんで」井上尚弥を元世界王者・山中慎介が分析…”神の左”が驚いたある場面とは?「僕が思わずうなったのは…」
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byGetty Images
posted2023/07/25 11:00
ジェイソン・モロニーを沈めた井上尚弥の右ストレート。”神の左”と恐れられた元世界王者・山中慎介が驚嘆したあるシーンとは?
山中が思わずうなった場面とは…
「最後のあの右のカウンターはそれまでも狙っていましたけど、距離がちょっとだけ近くてうまくいかなかった。そこもきちっと修正していたし、もし自分のパンチが当たらなくても相手のパンチが当たらないように顔の位置をずらしていました。
僕が思わずうなったのは、相手のパンチに合わせてアッパーを打った場面です。自分の顔が空かないようにストレートを打つのが普通ですけど、ここでアッパーですからね。自信と練習の裏付けがあるからできること」
“作戦を変える”との表現は適していないのかもしれない。そもそも作戦をハナから決めつけず、試合を進めながら適した攻略法を選択してしっかりと遂行していくやり方に見える。マロニーを倒したカウンターも当たりそうな感触があったために逆算して「前に行きすぎない」よう微修正を加えたというのが山中の見方だ。「微」が結果的に「大」の差を生むというボクシングの魅力を井上は体現している。
「全部が倒せるパンチ…どう警戒すればいいか」
左ストレート一本で倒してきた山中と井上ではタイプがまるで違う。それでも勝負に出ていくタイミングや状況の見極めなど、一度決めたら迷わない「決断実行力」は共通する。自分を信じ切って戦うからこそ、それが可能となる。
「見ていて強く感じるのは、自分の感覚を何よりも大切にしているなってことです。戦いながら、カウンターのアッパーみたいな発想がポンと生まれてくる。そうやって対応力が磨かれているところがある。対戦相手からしたら嫌だとは思いますよ。だって全部が倒せるパンチなんで何をどう警戒すればいいか分からない。そう思わせている時点で優位だと言えるでしょうね」
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