野次馬ライトスタンドBACK NUMBER
「雄星」から「菊池」への改名は正解!?
今こそ登録名変更の効果を考える。
text by
村瀬秀信Hidenobu Murase
photograph byMami Yamada
posted2011/02/07 10:30
「心機一転、原点に立ち返り、野球に専念したいと思います」と改名について説明した菊池選手
球春到来! なんて言葉も踊る2月の初旬。12球団が一斉にキャンプインを果たし、選手たちだけでなく、スポーツ新聞やスポーツニュースからは連日、熱気のこもったレポートが届けられている。
だというのに、沖縄キャンプ地まわりからのお呼びが一向に掛からない筆者は、寒風に晒されながら小金井の屋台で不貞腐れて飲んだくれる日々。
「我慢してればいいことあるから」
店のオヤジがそう言って慰めてくれる。ここのオヤジは姓名判断が得意らしく、一度占ってもらったことがあり同じことを言われたが、今のところ、当たる予兆はなにもない。
屋台のオヤジが占う、登録名を変更した菊池雄星の今季は?
名前といえば、昨日のスポーツニュースで西武の菊池雄星の背ネームが「雄星」から「菊池」に変わっているのを観た。昨年あれだけ騒がれたルーキーも、ケガやトラブルの災難続きだったのだから、名前を変えて心機一転したいという気持ちもよくわかる。
そんなわけで、オヤジに雄星について聞いてみたところ、総画がなんたら、外画がなんたらと、よくわからないことを言いつつ、結果的に「雄星」より、「菊池雄星」の方がだんぜん、運気がよく、真剣に野球だけに打ち込めば二ケタは勝てるということだった。
おお、すごい!……って、こんなこと記事にしてていいのだろうか。沖縄の海は遠い。
「でもさ、運気がどうこうじゃなくても、この改名はいいって。これまで『雄星』が騒がれすぎだったのよ。これで特別待遇のお客さんから、本当の意味でプロ野球選手になったということ。これが本当の雄星民営化だよ」
同席していた頭髪の薄い西武ファンが空々しく笑う。2月の東京は寒い。
改名でブレイクするんだったらパンチ佐藤はどうなのよ!?
というわけで、登録名の話である。
今季も菊池雄星をはじめ、多くの選手が登録名を変更した。西武の許銘傑は「ミンチェ」、ヤクルト・高井雄平は「雄平」、阪神・藤川俊介は「俊介」、横浜・安斉雄虎は「雄虎」という本名から呼び名への改名パターンもあれば、「寺原早人」が「隼人」へ、「弥太郎」が「坂元弥太郎」へと、以前に改名した名前で結果が出ずに本名へ戻したというパターンもある。
名前というものは、本名よりも日常的に使われているものが、その運気を左右するようだ。芸名、ペンネーム、旧姓、源氏名、野球選手でいえば登録名がそれに当たる。
我ら日本人は名前に並々ならぬ執着を見せる。なんとか運気の良いものにしようと、生まれた時から字画本を漁り、風向きが悪ければ、改名やら細木数子やらに走ってしまうのだが、果たして、名前が変われば運気が変わるというのは本当なのだろうか。
野球界でこのテの話となると、真っ先に上がるのがイチローとT-岡田である。彼らの改名は確かにインパクトがあったうえに、成績も大ブレイクを果たしている。あながち改名の効果は間違いではないように思えるが、しかし、イチローもT-岡田も前年までにウエスタン・リーグで圧倒的な数字を残し、ブレイクの兆しはあった。意地悪な見方をすれば、彼らは改名しなくてもブレイクしていたといえる。本当に改名効果があるのなら、イチローと一緒に改名したパンチだって、今頃は「フェンウェイパークにお集まりの12万5000人のファンの皆様……」とやっていてもおかしくはないのである。