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高校生イチローは“練習しない天才”? 同級生が語る真相「一朗にとって名電も甲子園も通過点」「日経新聞読んでた」「2本は予告付き本塁打」

posted2022/08/14 17:01

 
高校生イチローは“練習しない天才”? 同級生が語る真相「一朗にとって名電も甲子園も通過点」「日経新聞読んでた」「2本は予告付き本塁打」<Number Web> photograph by Katsuro Okazawa/AFLO

愛工大名電時代の鈴木一朗は投手として活躍するとともに、のちの「イチロー」で見せた天才的バッティングセンスを発揮していた

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赤坂英一

赤坂英一Eiichi Akasaka

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Katsuro Okazawa/AFLO

現役生活を通じて野球を突き詰めたイチローだが、プロ直前の高校時代はどんな選手だったのだろう。旧友たちの証言で、“意外な実像”がいま明らかに! Number1049号(2022年4月14日発売)より『[愛工大名電チームメイトは見た!]高校生・鈴木一朗の“真相”』を特別に無料全文掲載します。

「今年もちゃんと自主トレやっとけよ」

 愛工大名電高時代の同級生で、甲子園にも出場した高田広秀は、イチローにそう言われている。彼はイチローの草野球チームで高校時代と同じ三塁を守る選手なのだ。

「イチローの練習って無茶苦茶スパルタなんです。草野球なんだから、楽しくやるよって言ってたんだけどな、最初は」

 ところが、昨年12月になってイチローが突然「日が迫ってるからしっかりやれ」と言い出した。打撃投手やノッカーを務めるのは、本気モードのイチロー自身だ。

 高田たちが練習場で歩いていただけで、「ダッシュだ!」とどやされる。イチローがノックする打球を下がって捕ったら「前へ出ろ、前へ!」。打球を身体で止めると「そうそう、それだ!」。時には「野球をナメるな!」と厳しい活も入れられる。

「もう、怖い、怖い。イチローに散々しごかれたおかげで足がパンパン。当日は強力なロキソニン飲んで試合に出ました」

投手イチローとバッテリーを組んだ捕手が覚えている練習

 イチローは現役時代、人一倍練習で汗を流し、自らを限界まで追い込んでいた。草野球でも妥協を許さぬ姿勢は変わらない。高校時代、投手のイチローとバッテリーを組んだ同級生の捕手・畑憲作が言う。

「僕らの高校時代、1980~'90年代の“名電野球”です。昔は毎日そういう練習をやっとりました。いつも必死でがむしゃらに、ユニホームをドロドロにしてね」

 その中で最もユニホームを汚していたのが「イチロー」になる前の鈴木一朗だった、と誰もが思うだろう。が、意外なことに、畑も高田も口をそろえて首を振った。

「いや、一朗のユニホームだけは、ずっと真っ白でした。高校時代の彼は、とにかく誰よりも練習をしなかったんですから」

 当時の呼び名は「イチロー」とはアクセントの異なる名古屋弁での「一朗」。上級生がいる1、2年生までは全体練習に参加していたが、夕食後の自主練習はしたことがない。3年生では全体練習すらまともにやらず、姿を消していた。高田が言う。

「僕らが泥だらけになっているころ、最後のメニューのベースランニングに、一朗がまたやってくるんですよ。猛スピードで20周走ったら、寮に帰って一番風呂や」

 練習していない間、一朗は何をしていたのか。高田が本人に聞いたら、「トレーニングルームで昼寝したり、寮で新聞や雑誌を読んだり」という答えが返ってきた。

【次ページ】 一朗が陰で練習していたところなんて……

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