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統一戦延期で「心に穴が空いた」井岡一翔はなぜ大みそかのリングに立ったのか? 原点回帰した王者に挑戦者は脱帽「完璧なボクサー」
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2022/01/04 17:05
友人の槙野智章から受け取ったヴィッセル神戸のユニフォームを身にまとい、試合後の会見に臨んだ井岡一翔
挑戦者の福永も脱帽「完璧なボクサー」
そうして迎えた福永戦は、井岡の言うように「初心」を大いに感じさせる内容だった。井岡は決して派手なボクサーではない。きっちりとガードを上げてディフェンスし、どっしり構えて正確にポジションを取りながら、コツコツとパンチを当てて相手を崩していく。理にかなわない打ち合いや、一発を狙った大振りなパンチとはどこまでも無縁。決して焦らず、ていねいに、ていねいに試合を組み立てていくのである。
福永戦では原点ともいうべきボクシングに徹した。9月のフランシスコ・ロドリゲス(メキシコ)戦で、少なからず被弾するというらしからぬ姿を見せた反省も大きかった。だから今回は最後まで絶対にスキを見せなかった。優位に立っても無理に倒しにいこうとはしなかった。挑戦者をして「完璧なボクサー」と言わしめるスタイルこそは、井岡の真骨頂だった。
さて、2022年の目標はいよいよ統一戦になる。コトがうまく進めば春にアンカハスとの仕切り直しのWBO&IBF統一戦が待っている。一方で、WBA&WBC王座を保持するエストラーダはゴンサレスと3度目の対戦が今春に計画されている。井岡はアンカハスに勝利し、WBAとWBCのベルトを吸収して4団体統一王者になることが最終的な目標だ。
「アンカハスとやることでその話もぐっと近づいてくると思う。僕がベルトを2本まとめれば、残りの2本がばらけていたらまた話は遠いと思うけど、まとまってるんで引き寄せられるんじゃないかなと思う」
日本勢は井岡だけでなく、バンタム級の井上尚弥(大橋)が4団体統一を狙い、ミドル級の村田諒太(帝拳)も延期となったゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)との2団体統一戦を今か今かと待っている。統一戦に沸く2022年を期待したい。