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中日・根尾昂は12歳から変わらない、目力も謙虚さも…少年時代から知る元用具担当者が明かす秘話【初本塁打が満塁弾】
posted2021/05/09 11:03
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph by
Kyodo News
中日の根尾昂に待望の初本塁打が出た。5月4日のDeNA戦(バンテリンドーム)で、大貫晋一から右中間スタンドに運んだ一発は、何とグランドスラム。1号が満塁ホームランだったのは、史上87人目だった。
3年目。105打席。21歳1カ月。遅くはないが、早くもない。というのも、この世代は粒ぞろいで、小園海斗(広島)、山口航輝(ロッテ)、太田椋(オリックス)がすでに4本、根尾と大阪桐蔭高校同学年の藤原恭大(ロッテ)、濱田太貴(ヤクルト)、野村佑希(日本ハム)も3本と若くして才能を輝かせているからだ。
それでもホームグラウンドのスタンドは総立ち。両親や恩師の談話も添えられるなど、スポーツ紙各紙の扱いも大きかった。以前に筆者は根尾のことを「国民の息子」と書いた。いかにも利発。ちゃらちゃらとは対極の立ち位置は、まさしく「理想の息子」である。
根尾昂という才能に最も早く触れた1人
「私はホームランを生で観たわけではなく、仕事の帰り道にカーラジオで聴いていました。もう鳥肌が立ちましたね。それで家に帰って、今度は映像で確かめて……。もちろん本人にも祝福のラインを送りましたよ。とんでもない数が届いていたはずなのに、即、返信がありました。ああいうところですよね。根尾選手がすばらしいと思うのは」
ここにも根尾を息子のように慈しむ“父”がいる。厳密には野球用具を介した元担当者と顧客という関係なのだが、その絆は太さだけではなく、長さも余人には及ばない。ゼット株式会社の名古屋支店でリーダーの肩書きをもつ伊藤嘉浩氏だ。地元関係者を除けば、いわば根尾昂という才能に最も早く触れた1人でもある。初めて会ったのは、2012年晩秋と記憶する。根尾は岐阜県飛騨市の河合小6年生だった。