バスケットボールPRESSBACK NUMBER
Bリーグ、桜木ジェイアールが引退。
「Mr. シーホース」の存在感を回想。
text by
青木崇Takashi Aoki
photograph byB.LEAGUE
posted2020/06/20 11:50
2019-2020シーズンは40試合に出場し通算310得点(平均7.8得点)、206リバウンド(同5.2リバウンド)を記録した。
まさかのターンオーバーが起こり……。
激戦から20分後にスタートした5分ハーフのゲーム3は、残り30秒でシーホースが2点リード。タイムアウト後のオフェンスでしっかり時間を使えば、たとえ得点できなくても栃木が追いつくための時間を短くできるはずだった。
ところが、攻め急いだことからまさかのターンオーバーが起こり、速攻から遠藤祐亮にレイアップを決められてしまう。残り時間は21秒。次のオフェンスで時間をしっかり使い、ラストショットを決めれば勝ちという状況は、シーホースにとって決して悪いものではなかった。
ただし、コート上でプレーしていた5人は状況判断力が落ちていた。
ゴール下のシュートだったとはいえ、アイザック・バッツが残り12秒で打ってしまったのは致命的なミス。残り6秒でタイムアウトをとった栃木は、見事なセットプレーから残り2秒でライアン・ロシターがレイアップを決めて逆転し、ファイナル進出を果たしたのである。
将来の夢はヘッドコーチ。
ゲーム3の桜木はDNP-CD(コーチの判断で出場機会なし)。長年シーホースを牽引してきた大黒柱が、大事な試合で1秒もプレーしなかったことは本当に衝撃的だった。
2点リードしたラスト30秒、経験豊富で的確な状況判断のできる桜木がコートにいれば、自身がボールを持っていない場合であっても、チームメイト全員に”時間を使え!”という指示を間違いなく出していただろう。
試合後、「とても悔しい負けだ。私がコートにいれば、あのようなことは起こらなかった」と語った桜木の表情はいつもと変わりなく、時に笑みを見せるくらい冷静だった。
しかし、ビッグゲームで一度もプレーできなかったことは、まさかの逆転負けと同じくらいショックだったと容易に想像できる。栃木とのゲーム3は、数字に出ない部分でも桜木の存在がいかに重要かを改めて示したと言える試合だった。
“シーホースの黄金時代”を支えた桜木のキャリアは終焉を迎え、2020-21シーズンからシーホース三河も、桜木自身も、それぞれ新たな道を歩み出す。
桜木は将来の夢であるヘッドコーチとなるための第一歩として、Wリーグのアイシン・エィ・ダブリュ ウィングスのテクニカル・アドバイザーに就任。新たなチャレンジをスタートした。
そう遠くない未来に、「ミスター・シーホース」がコーチとして、再びシーホースに戻ってくることを楽しみに待とう。