酒の肴に野球の記録BACK NUMBER
映画でDeNAの2019年を残す意義。
広報の力説から感じた「横浜愛」。
posted2019/12/13 11:30
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Kiichi Matsumoto
オープニングタイトルの終わりのほうに、小さく「映倫」のマークが出ているのを見て、「あ、本当に映画なんだ」と思った。
『FOR REAL-戻らない瞬間、残されるもの。―』は、横浜DeNAベイスターズが毎年オフに製作しているドキュメンタリー映画のシリーズ第7弾だ。
2011年オフにDeNAがベイスターズを買収してから、2015年を除いて毎年製作し、劇場公開するとともにDVDを販売している。
ポジティブに解釈することもなく。
端的にいえば「良質のドキュメント」だ。
最近のNPB球団は、ファンクラブ会員だけにチームの魅力を伝えたり、今シーズンを振り返る「ビデオメッセージDVD」を特典でつけることが多いが、そういうものとは一線を画している。
それもファンが気持ちよくなるような映像をつなげたものではなく、残念な、あるいは不都合なシーンも伝えている。
また目の前で起こったできごとを「うまいことポジティブに解釈する」ようなこともしていない。シーズンのさまざまな出来事を、できるだけそのまま伝えようとしている。
映画の途中で「だからFOR REAL なんだ」と腑に落ちた。
それもこのドキュメントはどこかの放送局の製作ではない。横浜DeNAベイスターズが自らのシーズンを、そのまま正直にドキュメントしている。チームの目線なのだ。これは他のどんなメディアにもできない。
映画では何度もベンチの奥からグラウンドの試合を眺める風景が出てきたが、それが基本スタンスなのだろう。