畠山健介のHatake's roomBACK NUMBER
2015年W杯戦士・畠山健介が語る、
スクラムから見たジャパンの現在地。
text by
畠山健介Kensuke Hatakeyama
photograph byMiki Fukano
posted2018/12/26 10:00
畠山健介は現在のジャパンの方向性を支持している。しかし、彼だからこそ見える注意点もあるという。
スクラムを矛にするために。
では、W杯前年の2018年の強化を終えて、日本代表のスクラムの完成度はどうか。
僕は「問題ない」と思っている。スクラムからボールを出す、という点で4年前よりスムーズにできている。
ロシア戦前半の出来はよくなかったが、あれはキングスホルムスタジアム特有の「ぬかるみ」に適応できなかったのもあったと思う。キングスホルムは2015年W杯のスコットランド戦の会場で、僕はニューカッスルの一員としてイングランド・リーグで何度かあのスタジアムでプレーしたが、あのグラウンドは足場が悪く、踏ん張りがあまり利かない。
ロシアの高いモチベーションに圧倒された感もあったが、後半に入って立て直して、ちゃんと逆転できたのは日本の高い地力を示すものだろう。
ただ、欲を言えば、来年の本大会を見据えて、スクラムでペナルティを奪うことができれば、頼もしい武器となる。特にW杯という大きな舞台では、スクラムで優位に立つことがかなり重要だ。
実際2015年大会でも、サモア戦とアメリカ戦は、スクラムでペナルティを奪い、そこからのキックでゲインしようと(タッチラインに蹴り出してマイボール・ラインアウトに)、事前にプランニングしていた。たとえるなら、いまの日本のスクラムは“盾”にはなっているけど、“矛”にはなっていない。
「もう少し、早歩きしても」
奇しくも4年前の4連戦の成績も「1勝3敗」だった。しかし、W杯に向けた問題意識というか、「このままじゃヤバい」という危機感は4年前の方が圧倒的に強かったように思う。
ジャパンの強化の方向性は間違っていないと思う。不安視する必要はない。テストマッチで振るわなくても、「W杯が一番勝たなくてはならない舞台」という、ある種の余裕というか、ゆとりを感じられるのは、日本ラグビーの進歩と言えるのかもしれない。
だけど、4年前の尋常ならざる緊迫感を肌身で知る人間としては、老婆心かもしれないが、「もう少し、早歩きしてもいいんじゃない?」と思ったりもする。
(構成:朴鐘泰)
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