イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー、大谷翔平への思い入れ。
「サイヤング賞翌年に本塁打王を」
posted2018/09/22 08:00
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
Kyodo News
会長付特別補佐となり、早4カ月半が過ぎた。試合前のフリー打撃では、今も打球がポンポンと右翼フェンスを超えていく。今季最後のマリナーズとエンゼルスの4連戦。最初の2日間でイチローは21本の柵越えを放った。
初戦の試合前。24歳の大谷が44歳のイチローの元へと挨拶に走った。我々にとってはごく普通の光景に移るが、他チームの先輩の元へ律儀に出向くのは日本人選手くらいのものだ。
9月からメジャー再昇格を果たした田沢純一も昨季マーリンズでともに戦った大先輩の元へ走り、頭を下げた。
柵越え本数ではイチローが圧勝。
「そうですかぁ(笑)」
イチローがこう言って高笑いしたのは1日目のことだった。フリー打撃でイチローが11本の柵越えを放った。大谷は6本。その事実を伝えた時のことだった。
2日目もイチローは10本、大谷は6本。現役選手でない44歳が2日連続で圧勝した。イチローは穏やかな表情で笑った。
「まぁ、そうやって(本塁打の数を数えて)遊んでいてください」
大谷に勝負の意識がかけらもないことは承知の上。たわいもない会話を楽しんだ。
9月13日から16日の4連戦で今季のマリナーズとエンゼルスの全19試合が終了した。大谷がイチローの前で残した二刀流1年目の成績は以下のようになった。
投手として、5月6日に先発し、6回を2失点、6三振を奪い勝利投手。最速は99.5マイル(約160キロ)を記録した。
打者としては43打数10安打、打率.233に終わったが、9月15日にはイチローの前で初めて本塁打を放った。それは日本人新人選手として初となる20号本塁打。打球は大谷らしくセンターを超え、イチローは感心していた。