イチ流に触れてBACK NUMBER
イチロー「バカな盗塁はしない」。
成功率81.4%、508盗塁に貫く信条。
posted2016/11/30 11:30
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
AFLO
米国の安打製造機ピート・ローズを抜き去る世界歴代最多の4257安打を放ったのは、6月15日、太平洋からの海風が爽やかなカリフォルニア州サンディエゴでのことだった。それから53日。メジャー史上30人目の3000安打は8月7日、標高1600メートルの日差しが眩しいコロラド州デンバーで達成された。
イチローの2つの偉業達成が大きな感動を呼び、2016年はまさにメモリアルイヤーとなったが、もうひとつあった大きな記録は彼の野球観を表す出来事だったと思っている。4月29日、ミルウオーキーで行われたブリュワーズ戦。イチローはメジャー史上38人目の500盗塁を達成したのだった。
「2900安打+500盗塁」の言葉に、イチローは笑った。
1番右翼で出場した初回。右前打で出塁すると3度の牽制をかいくぐり二塁盗塁に成功。実働15年と1カ月での500盗塁到達はシーズン平均で33盗塁が求められる。着実に数字を積み重ねてきた証と言えるが、試合後のイチローはそんな事実にも最初は淡々としていた。
「まぁ、特別な感慨はないですけどね。随分、時間かかったなぁという印象ですけどね。だって、レギュラーで出てないと1の距離感が全然違うから。プラス1の距離感がね」
イチローにすれば、もっと早く到達出来たという思いはあるだろう。偽らざる気持ちであるのもわかったが、これだけでは物足りない。この時点でイチローの安打数は2945本。そこでアレンジを加え、こんな質問をしてみた。
「2900安打+500盗塁はメジャー史上イチローさんが8人目。他の7人はタイ・カッブ(元タイガース)やバリー・ボンズ(元ジャイアンツ)ら超一流の万能選手ばかり。この点では?」
するとイチローがニヤっと笑った。