野球クロスロードBACK NUMBER
開幕投手は涌井、でもエースは石川?
成瀬移籍のロッテを背負うのは誰か。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2015/03/24 11:55
田中将大、斎藤佑樹の活躍を横目に見ながら、社会人を経由してプロ入りした石川歩。期待通り即戦力の活躍を見せた男に、2年目のジンクスは縁遠いものに見える。
石川が「第2のシンカー」以上に力を注いだもの。
1年目から好成績を収めた選手というのは、より高みを目指すために新たな武器を欲しがる傾向にある。投手にとってそれは変化球。球種が増えれば投球の幅が広がる、というのが大きな理由だが、同時に、そこに固執するあまり投球フォームを崩してしまうなど、前年までのセールスポイントが失われてしまう危険性も孕んでいる。
しかし石川の場合は、しっかりと自分の足元を見据えていた。
「新しいシンカーは、まだって感じです。もとのシンカーもまだまだなんで」
そう述べる石川がシンカー以上に力を注いでいたのが、ストレートのレベルアップだ。
オフから筋力トレーニングを取り入れ、春季キャンプまでに体重が78kgから83kgにアップ。肉体改造に成功した。技術面でも、キャンプからブルペンでの投げ込みを精力的に行い、実戦マウンドでも同じパフォーマンスを発揮することを心がけてきた。石川はその目的をこう語る。
「腕をガッて振ることを意識してしまうと、どうしても力みが出ていい球がいかなくなるんで。バッターは見ずに、自分のフォームとタイミングで力のあるボールを投げられるようにしていきたいです」
目指すのは、自分のペースで打者を翻弄していく投球。
ストレートに磨きをかけると言えば、スピードアップを連想しがちだが、石川の目的はそれだけではない。
重要視しているもの。石川の言葉からも窺えるように、打者ありきの勝負ではなく、自分のペースで打者を翻弄していく投球術の確立が、その目標だ。
「カウントが悪くなったりすると投げ急いでしまうんで、バッターに向かっていく姿勢をもっと出していきたいです」
相手の懐に力のあるストレートを投げ込むことひとつだけでも、最低限の制球力が求められる。その感覚を、オープン戦で養えたことは石川にとって大きな収穫となった。
3月8日のソフトバンクとの試合では、3回に柳田悠岐への初球が真ん中に入り、レフトスタンドに放り込まれた。この時、石川は「簡単に入りすぎてしまいました」と不用意な1球を悔やんでいたが、試合全体を通しての投球については、自分の理想に近づいていると、前向きに話していた。
「変化球の精度はちょっと甘いかな、と感じましたけど、ストレートで三振を取れたのがよかったです。自分のボールを投げられなかったらスタートラインにも立てないんで、課題はありましたけど全体的にはよかったと思います」