REVERSE ANGLEBACK NUMBER
内山高志のパンチは「変化」する。
強さ、角度、伸びのバリエーション。
posted2015/01/07 10:30
text by
阿部珠樹Tamaki Abe
photograph by
AFLO
年の暮れにボクシングの試合が集中するのはすっかり恒例になった。去年などは大みそかだけでなく30日にも試合が組まれ、タイトル戦、ノンタイトル戦合わせると、何試合あったか、すぐには答えられないほどだ。あれだけ試合が多いと、当然凡戦もあるものだが、全体の印象としては好試合が多かったように思う。
強烈な印象を与えたのは2階級制覇を成し遂げた井上尚弥の試合だろう。43勝して一度もKO負けしたことがない名王者をわずか2ラウンドで倒した左ボディは夢に見そうな破壊力だった。ボクシングにおける適正階級というものを考えさせられた試合でもあった。
王者に打ちまくられ、左の頬を瘤取り爺さんのように腫らしてふらふらになりながら、それでも2度のダウンを奪った天笠尚の試合も忘れがたい。往年のファイティング原田を思わせる100発近い連打で4団体制覇を達成した高山勝成の試合は、クレバーできれいなファイトの多い今の日本人王者の中で断然異彩を放っていた。
年末にもっとも印象的だった、内山高志。
しかし、そうした印象的な試合以上に感心させられ、うならされたのはスーパーフェザー級内山高志の9度目の防衛戦だった。
内山は対戦相手の故障などでマッチメイクが上手く行かず、試合は前年の大みそか以来1年ぶり。大きな故障があってのブランクではないが、試合カンが鈍っているのではという懸念がないわけではなかった。挑戦者のイスラエル・ペレスはランキング8位だが、アマチュア時代にのちの世界王者を破ったこともあり、KO率も高い難敵である。試合がはじまっても、強打に定評のある内山に対して、決してひるまず打ち合いを挑み、時にハッとさせるようなパンチを出して応戦し、闘志を示した。
だが、この日の内山は、ブランクなど全く感じさせないような試合ぶりで、徐々に挑戦者を圧倒していく。