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11年ぶりに復活したオーストリアGP。
マルコとラウダが夢の「競演」。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byGetty Images
posted2014/06/29 10:30
オーストリアグランプリの会場で、奇跡の4ショットを形成した左からベッテル、ニキ・ラウダ、ゲルハルト・ベルガー、ヘルムート・マルコ。
不死鳥・ラウダはまさかのマシンをチョイス。
「レジェンド・パレード」で、そのマルコを上回る一番の大声援を受けながら日曜日のレッドブルリンクに登場したのが、不死鳥ことラウダだ。ラウダがこの日駆ったマシンは、なんと'76年製のフェラーリ312T2。そう、'77年に王座を獲得した時の愛車であると同時に、'76年にニュルブルクリンクで開催されたドイツGPで瀕死の重傷に見舞われたときのマシンなのである。
その悪夢のマシンであえてドライブするあたりに、ラウダの不死鳥らしさがうかがえると同時に、地元オーストリアGP復活を盛り上げたいという熱い思いが感じられた。
ラウダは現役引退後、フェラーリのアドバイザーとなったり、ジャガーのチームマネージャーを務めた後、2012年からメルセデスAMGの非常勤会長に就任。ルイス・ハミルトンの獲得に一役買っただけでなく、ドライバー2人の良き相談役としても、チーム内で重要な役割を担っている。
「これが最初で最後の共演になるかもしれない」
昨年まで4連覇を達成したレッドブルと、今シーズンをリードするメルセデスAMG。その両チームになくてはならない存在としていまなお輝き続けるマルコとラウダ。この2人のオーストリア人に共通しているのは、肉体的に大きなダメージをレースで負いながらも、いずれもレースを愛し、そのレースに人生を捧げているという点である。
そうでなければ、地獄を見たときに乗っていたマシンのコクピットに収まることなど、できはしない。だからこそこの2人の言葉には重みがあり、チーム内の多くの者を説得できる力があるのだと思う。そして、そのような存在が、いまのフェラーリやマクラーレンに不在だということも、事実なのである。
オーストリアGPのレーススタート1時間20分前に行なわれたレジェンド・パレード。ベルガー、ベンドリンガー、アレキサンダー・ブルツら、オーストリアが生んだ元F1ドライバーらとともに、レッドブルリンクの丘を駆け抜けた71歳のマルコと65歳のラウダ。あるオーストリア人は言った。
「おそらく、これが最初で最後の競演になるかもしれない」
11年ぶりに開催されたオーストリアGPの勝者は、私の中ではマルコとラウダ、あなた方である。