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世界屈指の登山家が明かす、
“運命の山”を巡る物語。
~映画『ヒマラヤ 運命の山』~
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph by(C)Nanga Parbat Filmproduktion GmBH & Co. KG 2009
posted2011/08/13 08:00
『ヒマラヤ 運命の山』 監督:ヨゼフ・フィルスマイアー 8月6日よりヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開
欧州の名登山家が持つ、ドライでタフな自然への対処法。
しかし、その後は最悪の展開に。下山時に弟が死亡。ベースキャンプと音信不通に陥った結果、翌28日に登頂した遠征隊の別の2人が「初登頂」と記録される。さらに帰国後、弟ギュンターの死などを巡り隊長と14もの訴訟を戦うことに……。
これだけの壮絶な出来事をどう受け入れるのか。弟の告別式のシーンでの牧師の言葉が、主人公の思いを代弁しているように思えた。
「多くの道が神へと導かれる。山を越える道もある。戻る者もいれば、その場に残る者もいる」
神の下の運命は時に辛いものだ。しかし、受け入れていくしかないのだと。さらに主人公のラインホルト自身は、あっさりとこう言い切る。
「(兄を失った)隊長にとって運命の山でも、ナンガはただの山に過ぎない。人間が感情を抱くだけだ」
自然を巡る過酷な運命を濃密に描きながら、最後には「仕方がない」と自覚する。作品を通じ、欧州の名登山家が持つ、ドライかつタフな自然への対処法が伝わってきた。