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アロンソ移籍で起こる玉突き人事!?
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2005/12/26 00:00
今季最後のヘレス・テストが終った翌週の12月19日、とんでもないニュースが飛び込んで来た。
今季初チャンピオンに輝いたF・アロンソが2007年からマクラーレン・メルセデスに移籍するというのだ。
マクラーレンが正式契約を発表するやその数時間後にはルノーもこれを認めるリリースを出しているから、近頃珍しい円満移籍といえよう。これまでの多くの移籍例は“来季から……移籍”というもので、しかも噂が多く、今回の再来年から移籍などという“超前倒し”正式発表はおそらくF1史上初めてなのではあるまいか。いや、プロスポーツ界でも珍しい例かと思う。
アロンソのマネージャーがルノーのスポーティングディレクター、F・ブリアトーレであることは周知の事実で、ブリアトーレの豪腕発揮の印象強し。しかしなにやら談合というか、インサイダー取引という匂いがしないでもないが……。
それはともかく、アロンソの移籍は今後数年間のF1勢力図を大きく左右するほどの衝撃力を持ったことは間違いない。
2007年からマクラーレン+アロンソはいいにしても、では、彼と組むドライバーは誰なのか?いちおうモントーヤは2007年までマクラーレンと契約はしているものの、その去就についてはマクラーレンではなくモントーヤ自身が権利を保有しているという。
それにアロンソが抜けたルノーの穴を誰が埋めるのか?が、気になる。おそらく、これまでの“ブリアトーレ人事”を振り返ると新人を抜擢。それを育ててあわよくばチャンピオンに、でなければどこかに売却する路線を採る気がする。ルノーの新人となれば、フィンランド路線のヘイキ・コバライネンなのか?
それもそうだが、ライコネンはどうなる?アロンソと組むことは考えられず、世評の通りにものごとが動くならアロンソに押し出された格好でフェラーリに行くことになろう。ハッキネンから同じフィンランドのライコネンへと、マクラーレン内部のドライバー全権委譲はスムーズに行っていたものだと思いきや、ライコネンとロン・デニス御大との関係は傍で見るよりずっとギクシャクしているようだ。
かりにライコネンがフェラーリ入りを果たすとして、では、シューマッハーはどこへ行く?2006年で引退すれば事は丸く収まる気もするが、サイボーグと呼ばれた彼のこと、もう一年走るとも言いかねない。だが、ライコネンとシューマッハーが組む“画”は想像しにくい。だとしたら、日本のどっかの野球人のように生まれ故郷を最後の花道に……となるか。すなわちメルセデス・ベンツへ。しかし、しかしアロンソ+シューマッハーがにこやかに肩組む姿もまた“ありえね〜!”なのである。
筆者の想像は、このミュージック・チェア(椅子取り合戦)であふれた最後の大物はトヨタに行くような気がしてならないのだが、どうだろう。
と、まぁ、アロンソの移籍から様々とてつもない連鎖反応が起きそうだが、これから数年のF1シーンはマクラーレンがヘゲモニーを握るということだけは間違いない。ボーダフォンをスポンサーに取り込んで、黄金時代を築くだろう。
だが、富める(マクラーレン)もの必ずしも最強(ルノー)ならずということを2005年のF1シーンは教えてくれた。来年のF1もまた激しい嵐の中にあることを想像しながら、当コラム読者に“メリークリスマス&ハピーニューイヤー!”のメッセージを贈って今年の締めくくりとしたい。1年間、ご愛読ありがとうございました!