北京五輪的日報BACK NUMBER
メディアバス、迷子になる。
text by
竹田直弘Naohiro Takeda
posted2008/08/09 00:00
高速道路上で突然停車。道の尋ねかたも大陸風だ 開幕直前、ようやく北京にやってきました。空港から出るとモヤがかかった真っ白な空が目にしみる。喉もちょっと痛くなってきたけど、気のせいだと思う。出発前に散々空気が悪いと聞かされたのが原因だ。そう信じたい。
当連載で松原さんが書いているように、たしかにメディアへの対応はよい。鋭い目つきの警備員も、取材パスをぶらさげた記者には笑顔でシャトルバス乗り場まで案内してくれる。メディアホテル行きのバスに乗りこみ、「楽ちんだなあ(喉は痛いけど)」と思っていたら、ここからが大変だった。
シャトルバスが道に迷ったのだ。
高速道路を快調に飛ばす。ここまではよかった。でも、出口を降りて、あらためて高速に乗ったあたりで「ん?」と思う。どう見ても空港方面に戻ってるから。再び高速を降り、一般道をグルグルと走るバス。その間、中国人ドライバーはずっとキョロキョロしつづけている。大門風の黒いサングラスをかけたベテランで、一見信頼できそうな男なのだが……。
バスは再び高速へ。そのときだった。高速道路上でいきなり停車。ドライバーが警官に道を聞きはじめたのだ(写真はそのときのもの)。その姿を見て、不安は確信に変わった。「あ、確実に迷ってるんだ」と。
「ソーリー、ソーリー」と言いながら戻ってくるドライバー。「道、分かりましたか?」と聞いても力ない笑顔を返すのみ。乗客たちは自力で解決しようと、一斉に北京の地図に目を凝らす。運転席に一番近かった私が、地図を見ながら道案内することになってしまった。当然、まったく土地勘はないのだが、自分だけの問題ではないので、必死にやる。「そこ右」「そこ左」「そこグルッと回って斜めに」
人間は、ピンチになるとものすごいパワーが発揮されるものだ。勘がことごとく当たり、ようやく「媒体村(メディアビレッジ)」と書かれたビルが見えてきた。乗客のみんなが、素晴らしいナビをした日本人をサムズアップで称える。「Yeah!」「Good job!」
バスを降りるとき、「この道を走るの初めて?」と聞いたら「うん」とうなずいたドライバー。この先、どうなることやら……。
それにしても喉が痛い。