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戦極とDREAM、
2大メジャーが選んだ道とは。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph bySusumu Nagao

posted2009/05/11 06:00

戦極とDREAM、2大メジャーが選んだ道とは。<Number Web> photograph by Susumu Nagao

 スタートから1年あまりで、戦極は大きく様変わりした。昨年3月、代々木第一体育館で開催された旗揚げ興行のキャッチフレーズは“継承”。PRIDEの後継団体であることを強く意識した打ち出しであり、吉田秀彦を筆頭に藤田和之、五味隆典、三崎和雄といったスター選手が並んだマッチメイクにも、PRIDE色が濃厚に表れていた。

 だが、彼らは期待通りの闘いを見せたとは言い難かった。戦極参戦以降、勝ち越しているのは三崎のみ。その三崎も、1月4日のチャンピオンシップで一本負けを喫している。逆に存在感を見せたのは北岡悟だ。ホームリングのパンクラスでは判定決着が多く、大事な試合で勝ち切れない印象があった北岡だが、戦極では一本勝ちの連続とナルシスティックなキャラクターで観客の目をクギ付けにし、五味をも下してライト級タイトルを獲得してみせた。

5.2戦極、“名よりも実”の満足感。

 PRIDEでスターだった選手の“名”よりも、発展途上の有望株が見せる“実”。5月2日に代々木第二体育館で行なわれた『戦極~第八陣~』は、現在の戦極のスタンスをくっきりと浮き彫りにするような大会だった。完璧な試合運びで優勝候補の座をさらに盤石にした日沖発、金原正徳はノンストップの攻防で会場の熱を高める。マルロン・サンドロの痛烈なKO劇も大きなインパクトを残した。階級を落としたことによるフィジカル面での優位性もあいまって、小見川道大は自信に満ちた闘いぶりでTKO勝ち。柔道とボクシングを融合させた小見川の“ネオ柔道”スタイルは完成の域に近づきつつある。引退をかけて臨んだ再起戦に快勝しながら「正直、勝てると思ってませんでした……」とつぶやいた瀧本誠のファイターらしからぬ佇まいも、妙に忘れ難い。“知らない選手ばっかりだったけど、見てみたら予想以上に面白かったな”。今大会にそんな感想を抱いた観客は少なくないはずだ。

 一方、日本の2大メジャーイベントとして戦極とライバル関係にあるDREAMのスタンスは、まったく違うものだ。“予想以上に面白い”戦極に対し、ゴールデンタイムでも中継されるDREAMでは、すべての大会で最大級の期待値と“予想通りの面白さ”が要求される。90点の大会でも、期待値が100ならそれは失敗なのだ。観客動員や視聴率も毎回シビアに査定されるから、ものをいうのは“即効性”である。

DREAMの“必要悪”が目論むもの。

 5月26日の『DREAM.9』(横浜アリーナ)では山本“KID”徳郁の復帰戦にホナウド・ジャカレイvs.ジェイソン“メイヘム”ミラーのミドル級王座決定戦、川尻達也vs.J.Z.カルバンというファン垂涎の対決も実現する。ダメ押しとばかり発表されたのは無差別級の『スーパーハルクトーナメント』だ。ミノワマンにボブ・サップ、チェ・ホンマン、さらには元大リーガーのホセ・カンセコまでが名を連ねる、完全に視聴率重視の企画である。良心的なファンからは批判されそうだが、これは一般層にアピールするための“必要悪”ではないか。サップやカンセコでリモコンの手を止めた視聴者が、そのまま川尻vs.カルバンやジャカレイvs.メイヘムも見て彼らのファンになること。それが主催者の目論見だろう。

 スタンスは違えど、戦極もDREAMも“今、自分たちがやるべきこと”に対して誠実だ。“実”で満足度を高めること。キワモノと思える企画にも踏み込んで世間と対峙すること。その両輪が揃い、回転数を上げてこそ、日本格闘技界の復興は実現する。

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