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3バックは本当に復活するのか?
ザッケローニの次なる一手に注目。 

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田邊雅之

田邊雅之Masayuki Tanabe

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2011/03/01 10:30

3バックは本当に復活するのか?ザッケローニの次なる一手に注目。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「(日本代表チームは)アジア杯で優勝しましたが、これは到達点ではありません。私の使命は日本サッカーの成長です。2014年のW杯ブラジル大会では世界のトップを争う実力のあるチームとして戦いたい」と2月21日には発言しているザッケローニ監督

 日本が4度目の優勝を飾ったアジアカップ。あれから3週間以上が経つが、得失点シーンやゲームセットの瞬間を別にすれば、プレス席が一番どよめいたのは、オーストラリア戦でザッケローニが最初に動いた場面だったと思う。

 後半11分、ザッケローニは攻撃的MFの藤本に替えてCBの岩政を投入。と同時に左SBの長友を前方に張り出させる。この結果、日本代表のシステムは岩政、吉田、今野の3人が最終ラインを形成する3バックへと変化した。

 たしかに巷では、システムは4-2-3-1のままで今野が左SBに回り、長友が前に上がっただけだという解釈もなされている。これはザッケローニの発言に負うところも大きい。彼は試合直後の記者会見で次のように説明したからだ。

「今野をアンカーの位置に置くことを考えたが、中盤のラインに入るのはちょっと不安があるということで、サイドバックに入れようと。そして長友を1つ前にずらすことにした。

 システムの変更はしなかった。FWやMFの選手を外してDFを入れた場合、受け身に入るという意図を相手に与えてしまうし、選手もそういう気持ちになってしまうので、4-2-3-1のままでいった」

アジア杯決勝後半でシステムを変えたザックの意図とは?

 しかしプレスボックスから眺めたピッチ上の図は、前半とは明らかに異なっていた。

 DFは岩政、吉田、今野の3枚。中盤の底には遠藤と長谷部の2ボランチが並び、その両脇には長友と内田がウィングバックとして張る。そして前方には岡崎と本田の攻撃的MFと、1トップの前田が並ぶ3-6-1(3-2-2-2-1)。これこそが、オーストラリア戦後半の基本陣形に他ならない。

 布陣が3-6-1へ変化したことを裏付ける材料は、他にもいくつか挙げることができる。意外なようだが、当のザッケローニのコメントもその一つだ。

 彼は例の選手交代を行った状況について「中盤を厚くすることをまず考えた」と証言している。これは決勝の翌日に行われた1時間に及ぶ記者会見でも変わらなかった。

「向こうはフィジカルの状態が良かったから、うちが走力でカバーするのか、人数でカバーするのかは別にして、いずれせよ中盤に人が必要だった」

 単純に考えて、システムが4-2-3-1のままで、個々の選手のポジションが入れ替わっただけならば、中盤の人数は「2+3」の5枚のままで変わらない。3-6-1にしなければ、中盤の数的優位を確保することはできなかったはずだ。

 日本代表のシステムが変化したことは、長友のポジション取りの変化からもうかがえる。

 後半、前目の位置に上がった長友は、前半4-2-3-1の「3」の左側をこなしていた岡崎よりも、明らかにワイドに開いた位置で構えるようになった。理由は簡単。4-2-3-1の攻撃的MFと、3-6-1におけるウィングバックでは、ピッチ上で物理的に確保できる幅が違うからだ。以後、長友はウィングバックとして幾度となくカウンターの起点となり、最終的にはゲームのキーマンになっていった。

【次ページ】 “3-6-1”の採用はチームづくりのキーポイントに。

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アルベルト・ザッケローニ

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