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山川穂高32歳「ヒール砲」の宿命…モメにモメたFA移籍→古巣西武戦で大ブーイング→敵地を黙らせる“史上3度目の満塁弾2発”は伝説になるか 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2024/04/16 06:00

山川穂高32歳「ヒール砲」の宿命…モメにモメたFA移籍→古巣西武戦で大ブーイング→敵地を黙らせる“史上3度目の満塁弾2発”は伝説になるか<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

古巣・西武相手にベルーナドームで2打席連続満塁ホームランを放った山川穂高。ソフトバンクの4番として今後どうなるか

 昨年までの山川は、ソフトバンクから最多の46本もの本塁打を打っていた。打点もロッテの115打点に次ぐ114打点。ソフトバンクは、最も大きな被害を被っていた強敵が、今季から味方になった。収支計算が一気に逆転したのだ。

 山川穂高は一軍、そしてレギュラーに定着した2017年から22年まで、6年連続でパ・リーグの5球団すべてから本塁打を打っている。また、2021年と22年は交流戦でも6球団中5球団から本塁打を打っている。どんな対戦相手でも、どの球場でもコンスタントに本塁打が出る点では、当代一のスラッガーと言ってよい。

 打席での構えは、西武時代の先輩の中村剛也と遠目では区別ができないほどよく似ていたが、中村がボールをバットの上に載せて運ぶ「技のホームラン」が多かったのに対して、山川はバットにボールをぶつける「力のホームラン」を打っていた印象がある。この2人のスラッガーの「対照の妙」もライオンズの大きな魅力ではあった。

プライベートの不祥事のちモメにモメたFA移籍劇

 本塁打王をすでに3回記録、打点王も1回。WBC日本代表としても世界一を経験し、まさに全盛期を迎えようとしていたスラッガーだったのだが――。

 昨年、彼は自分がしでかしたプライベートの不祥事のために、無期限公式試合出場停止を科せられ、1年をほぼ棒に振った。チームは一昨年の打点、本塁打の二冠王を失ってBクラスに転落した。チームの主軸を失うことが、いかに大きな損失だったかを物語っている。

 それでも山川は「FA年限」を満たしていると認定され、FA移籍することとなった。移籍先はかねてより噂されていたソフトバンク、同じパ・リーグのライバル球団だ。そして年俸は、単年2億7000万円から4年12億円プラス出来高払い込みの総額20億円へ。「焼け太りみたいなものだ」との声まで上がった。

 このFA移籍に際しては、人的補償で一時はソフトバンク最年長選手の和田毅の名前が挙がって撤回する騒ぎになるなど、ひと悶着があった。とにかく近年まれにみる「モメにモメての移籍劇」だったのだ。

西武ナインも当惑した中でグランドスラム2発

 それを考えれば、去年までの本拠地、ベルーナドームに初めて姿を現した山川穂高に対して、観客席から大ブーイングが起こるのは、致し方ないと言うこともできよう。しかし、この大ブーイングは西武ナインにとっても、必ずしも心地よいものではなかったようだ。

【次ページ】 「ヒール」として相手に憎まれるような成績を残せるか

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山川穂高
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