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M-1王者は天才か努力家か…「決勝直前にM-1全部見返した」史上最速優勝・令和ロマンが語る“圧倒的努力”「だから異例のネタ選びをした」 

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中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byYuki Suenaga

posted2024/04/07 11:03

M-1王者は天才か努力家か…「決勝直前にM-1全部見返した」史上最速優勝・令和ロマンが語る“圧倒的努力”「だから異例のネタ選びをした」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

2023年M-1王者の令和ロマン。高比良くるま(29歳、左)と松井ケムリ(30歳)。結成5年8カ月、史上最速でのM-1優勝だった

くるま それは決めていました。決勝前に2015年からのM-1を全部、見返したんですよ。ヘッドフォンで、音をめっちゃでかくして。そうしたら、トップはウケていたときでも、やっぱり(ウケの)初速は遅い。なので、もっとお客さんの方を向いたネタにしなきゃダメだと思ったんです。あと、流れに乗ることも考えていました。中盤、たとえば4、5、6番あたり、盛り上がりの山の中に入ったら、その組に近いテイストのネタをしないとダメなんです。空気を変えようとすると、流れが連続しない。終盤は逆に1回、落ち着いてしまうので、毛色の違うネタをやらないと爆発しないんです。わかりやすいところでいくと前大会、10番目で優勝したウエストランドさんがそうでしたよね。なので、ラスト出番だったら、流れを大きく変えるようなネタをやろうと考えていました。正統派のネタが続いていたら変化球、変化球が続いていたら正統なネタをやろう、と。

――これまでのM-1で『少女漫画』のネタほど、客を巻き込もうとした組はいないんじゃないですか。大阪だと客いじりのことを「客をいらう」と言って、年配の漫才師の方たちは嫌がるじゃないですか。だから、M-1の決勝でこんなことしていいのかなと少しドキドキしてしまいました。でも結果的に、あれが功を奏しました。

くるま 極端な話、寄席とかだと客席に下りたりすることもありますからね。それは笑いを取りに行く手段ではあるんですけど、上方漫才の伝統として正統ではないという考え方がある。M-1も上方漫才の伝統に近いところでやってきた。ただ、それはこちら側のエゴのような気もするんですよ。カッコいいですけど、盛り上がらなかったら意味がない。そのせいでM-1のトップバッターはずっと犠牲になってきたとも言えます。昔なんて、最初の3組ぐらいはぜんぜん笑いが起きないこともあったじゃないですか。

――序盤、審査員が意図的にピリピリ感を出す場合もありますもんね。

くるま 4組目くらいから盛り上がると、3本ネタをやったから温まったんだと言う人もいるんですけど、それは完全に誤認なんです。ネタの合間にMCの今田(耕司)さんが審査員や出場者とからみながら客席に話しかけたりしているから温まっているのであって。ツカミのないネタを何本やっても客席は温まらないんです。

ケムリ 前説(まえせつ)のタイミングとかも考えた方がいいと思うんですよね。

くるま わかる、わかる。前説で温め終わってから、トップバッターがネタをするまで1時間近く空いちゃうから。オープニング映像とか、審査員の紹介とかで。

あのツカミは“決勝限定”だった

――今大会の場合だと18時30分に番組が始まって、トップのお2人がネタに入ったのは19時18分ぐらいでした。

【次ページ】 あのツカミは“決勝限定”だった

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