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「メンタルを壊してまでパリを目指そうとは思えなかった」…女子卓球“黄金世代”加藤美優(24歳)が明かすコロナ禍の「葛藤」と「休養の決断」の裏側 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2024/04/06 11:01

「メンタルを壊してまでパリを目指そうとは思えなかった」…女子卓球“黄金世代”加藤美優(24歳)が明かすコロナ禍の「葛藤」と「休養の決断」の裏側<Number Web> photograph by AFLO

“史上最強世代”との呼び声高い日本の女子卓球界で戦ってきた加藤美優。パリ五輪を目前に控え、休養を選択した理由は何だったのか

 そして翌年、2022年1月の全日本選手権では、石川佳純らを破り自身最高成績となるベスト4入りを果たす。

「コロナ禍もあったので、逆に取り組み方を少し変えてみたんです。それまで全日本の成績がそんなにぱっとしないなと思っていたので、1回、そこまでの1~2カ月間とにかくやりこんでみようと思って。練習をかなり厳しくやりました。その成果が出た感じです」

パリへの選考レースもスタート…しかし気持ちに変化が

 その後はパリ五輪に向けた代表選考対象大会が始まり、新たな選考レースがスタートを切った。

 もちろん加藤も参加していたが、ここでも五輪という大会をそこまで強く意識はしなかったという。

「試合が増えたな……くらいですかね。パリに向けては、自分のメンタルを壊してまでやろうとは思えなかったんです。自分の気持ちがいちばん大事で、健康でいることが大切。そう思うようになっていました。それは東京(五輪)前の状況や経験があったからですね。もちろん成績を求めてしまう気持ちもあるので葛藤はあります。でも、最終的に自分の中では健康に生きることがいちばんということにたどり着いたので」

 当然、国内外を問わず大会に出れば全力でプレーする。ただ一方で、コロナ禍での複雑な状況を経て、卓球の結果だけが人生の全てではないという想いも大きくなっていた。

 そして加藤はその延長線上として、今年の全日本選手権の出場辞退と、競技の長期休養という決断をした。競技生活を含め、自分の人生をどう進んでいくのかを考えるための時間なのだという。

「別に『絶対に達成しなければいけない』という目標が必要なわけでもないんですよね。自分が毎日、幸せに生きられることがいちばん大事。いまはそう本当に思っているので」

 現在は競技のトレーニングはほとんどせず、卓球の普及活動や講演に力を入れているという。

「例えば技術のことだったり気持ちのことだったり、自分のこれまでの経験が伝わったらすごくうれしいですし、やりがいを感じます。競技を普及させたい……とかそこまで大それた思いではないんですけど」

【次ページ】 加藤が卓球と向き合ってきた「スタイル」

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