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スポーツ界が社会をリードする未来へ。「HEROs AWARD 2023」受賞者が、社会貢献をする理由。 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byTomosuke Imai

posted2023/12/28 07:00

スポーツ界が社会をリードする未来へ。「HEROs AWARD 2023」受賞者が、社会貢献をする理由。<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

「HEROs AWARD 2023」の受賞者。左から荒井daze善正氏、北海道日本ハムファイターズの稲葉篤紀氏、伊藤華英氏、和田毅氏、アディダス ジャパンの山本健氏

「指導者にも知識を持ってほしい」という伊藤さんの思い

 伊藤さんが、「月経は1年間の52週のうちの約12週間ですが、私が悩まされていた月経前症候群などを含めるともっと期間は長くなります」と語り始めると、聞き入っている参加者たちがより一層真剣な表情になっていった。

 また、伊藤さんが「スポーツ庁の資料によると指導者の約7割が男性なんです」というデータを紹介しながら、「男性にも最低限の知識を持ってほしい」と言うと、荒井さんや和田さんも「女性から直接話を聞くことはこれまでなかったので、今日は貴重な機会です」と応え、さらに真剣な表情に。

 伊藤さんのプロジェクトは男女一緒にプログラムを受けてもらう形式を取っており、その理由のひとつであるのが「指導者にも知識を持ってほしい」という思い。伊藤さんによると「男女問わず活動に協力したいという多くの声が寄せられている」とのことで、今後の展開が楽しみな状況になっている。

新たに発足させた2つのプロジェクトとは

 アワードでは、「HEROsプロジェクト」が新たに発足させる2つのプロジェクトの紹介もあった。ひとつはプラスチック問題に取り組むための最初の一歩として、使い捨てプラスチックをスポーツ界からなくしていこうという課題への取り組み。代表として元日本代表スイマーの井本直歩子さんが「まずはアスリートたちが起点となり、いろいろな競技団体やリーグ、企業などと一緒にたくさんのムーブメントを起こしていきたい」と挨拶すると、既に賛同者として名乗りを上げているアスリートたちがその場で立ち上がり、出席者から拍手を浴びていた。

 そして、もうひとつは「災害支援チーム」のプロジェクト。音頭を取る日本財団の笹川順平常務理事が「まずは2024年3月に小型ショベルカーの免許取得のための合宿を行ないます」と画期的なプランを発表し、「災害が起きたらみんなで現場に行って助けたいので、どうぞよろしくお願いします」と参加を呼びかけると、ここでも会場から多くの拍手が起きた。

「HEROs AWARD」の参加アスリートは「スポーツ界が社会をリードするムーブメントをつくっていきたい」という志を持つ者たちばかり。競技の垣根を超えた交流が行なわれるのも「HEROs AWARD」ならではの光景で、アスリートたちは新たなネットワークの構築のため、積極的に名刺交換をしていた。

 アスリートの力が最大化されることを目指す「HEROsプロジェクト」と社会貢献に参画するアスリートたちに、これからも大いに注目していきたい。

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