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「早いラウンドで負けると言われていたが…」“井上尚弥を最も苦しめた男”ノニト・ドネアが試合翌日に語ったこと「パワーがあるとは感じなかった」

posted2023/12/24 17:00

 
「早いラウンドで負けると言われていたが…」“井上尚弥を最も苦しめた男”ノニト・ドネアが試合翌日に語ったこと「パワーがあるとは感じなかった」<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

1度目の対戦では圧倒的不利予想の前評判を覆し、最終ラウンドまで井上を苦しめたドネア

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渋谷淳

渋谷淳Jun Shibuya

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Takuya Sugiyama

 WBC、WBO世界スーパーバンタム級王者・井上尚弥(大橋)は12月26日、有明アリーナでWBAスーパー、IBF王者マーロン・タパレス(フィリピン)と同級の4団体統一戦を行う。

 ここまで世界の舞台でも圧倒的な強さを見せ続けている井上。その絶対王者の“キャリア最大の苦戦”は4年前に戦ったノニト・ドネアとの第1戦だろう。当時、最強のライバルがその試合後に語った率直な「井上尚弥評」はどんなものだったのか。[誇り高き敗者が語る]ノニト・ドネア「一撃必中に賭けていた」(2019年11月15日発売、Number990号掲載)を特別に無料公開します。※肩書はすべての当時のまま

 日本を愛し、メディアに対しても常に気さくに応じてきたドネアは、ベルトを失った試合翌日のインタビューにも快く応じてくれた。約束の時間通り、ホテルのレストランに現れると、まず聞いたのは、井上と接戦を演じたことをドネア自身がどう評価しているのかだった。

「もちろんWBSSで優勝するためにリングに上がって、負けてしまったことに残念な気持ちはある。一方でこの試合に向けて一生懸命練習して、自分が今持っているすべてをリングの中で出し切れた。そういう意味ではがっかりしている気持ちと、誇らしい気持ちの両方がある」

“あの”パッキャオに次ぐフィリピン2人目の5階級制覇王者

 ドネアがこれまでに世界のリングで残してきた実績は井上を上回っている。世界的なスーパースター、マニー・パッキャオに次ぐフィリピンで2人目の5階級制覇王者であり、ワンパンチで相手を沈める強烈なパンチからついたニックネームはフィリピーノ・フラッシュ(閃光)だった。

 一方で、36歳という年齢、最近の試合でのパフォーマンスから「盛りを過ぎたアンダードッグ」という見方があったのも事実だ。試合会場で何度も流されたドネアのKO映像は、アメリカの老舗ボクシング雑誌、リング誌の年間KO賞に輝いたビック・ダルチニアン戦とフェルナンド・モンティエル戦。ともに文句なしのKOながら、それぞれ12年前と8年前の試合だった。

【次ページ】 井上を相手に迎え、昔の自分に戻った。

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