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名門・横浜高野球部“パワハラ解雇”の指揮官が神戸の新興校で挑む「新スタイル」…解任後は「自分を見つめ直す時間に」《YouTubeで野球動画制作も》 

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沢井史

沢井史Fumi Sawai

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posted2023/11/28 06:02

名門・横浜高野球部“パワハラ解雇”の指揮官が神戸の新興校で挑む「新スタイル」…解任後は「自分を見つめ直す時間に」《YouTubeで野球動画制作も》<Number Web> photograph by Fumi Sawai

昨年から彩星工科高を率いる平田徹監督。横浜高監督時代は4度の甲子園出場経験がある

 神奈川県と同じように150校以上の高校が集う激戦地でもある兵庫県。ただ、兵庫県は投手を中心にした守りの野球を徹底した学校が多く目につく。

「ロースコアの試合が多いですし、ノックを見て、そこまで印象に残らない学校でもいいピッチャーが必ずいる。あと、神戸地区は強豪校が固まっていて、僕らの所属する地区(神戸C地区)は滝川二もいて、いきなり地区大会で対戦することがあって大変です」

 ディフェンス面重視の学校が多い中、平田は打撃を鍛え上げた攻撃型の野球を目指している。それは決して守りを疎かにする訳ではなく「僕が唯一長所を挙げるとしたら(指導において)打撃力を伸ばせるところかなと自分で思っているんです」と理由を明かす。

 平田は周囲よりもまずは自チームを整備することに注視している。

「ウチはまだスタートアップの時期なので……。周りを気にするよりは内側をひとつひとつ整備して、積み上げていかないといけないんです。来年の夏を狙うには、よそのチームよりも伸び率で凌駕しないとダメと選手にはよく言っています。夏の覇権はシーズンオフの伸び率で決まると言っても過言ではないと思っています」

スタメンは1年生だけ。悪い面は目をつぶり、のびのびと…

 “強化クラブ元年”の今春入学してきた1年生が、この秋はそのままスタメンを占めた。本来なら入学してから体作り、技術指導とやるべきことは山積みだったが、悪い面は目をつぶり、夏休みはのびのびと力強くバットを振らせることにした。

「秋の(地区)大会がすぐ来るので(8月中旬から)、子供たちの発揮能力をどう引き出すかをずっと念頭に置いてやってきました。端的に言えば叱るより褒める、認める。良いところを積極的に認めて自信を持たせる。そちらが先決でしたね」

 地区大会では初戦で滝川二を接戦で下し、県大会出場を決めた。県大会3回戦では最速152km右腕の村上泰斗擁する神戸弘陵と対戦。初回に先制を許したものの、4回に突如制球を乱した村上から1点を奪って同点に。村上投手を降板させ、さらに6回に3点を加えて逆転勝ちした。

「村上君のボールは速かったですよ。でも、当てに行かず積極的に打ちに行くようにとは言っていました。徹底させたのは低めを狙うこと、ゾーンを下げること。ワンバンのスライダーは振ってもいいよ、と」

 高校に入学してまだ半年しか経っていない選手たちは、平田監督の指示を冷静に受け止め、対処していた。試合中、指揮官はほとんどベンチから動かず、イニングの合間もベンチ前での円陣はほとんど組まない。選手間で徹底すべきことを確認し合い、遂行していた。

【次ページ】 来年の夏は「本気で狙います」 

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