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伊藤華英が目指す、女子学生アスリートだけでなく男性にも知ってもらいたい「生理の正しい知識と理解」 

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矢内由美子

矢内由美子Yumiko Yanai

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2023/12/05 13:00

伊藤華英が目指す、女子学生アスリートだけでなく男性にも知ってもらいたい「生理の正しい知識と理解」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

女子学生アスリートが選択肢を持てることが大事

――啓発活動の一環として、来年3月には『検定』も誕生すると聞いています。

「検定には専門的な内容の1級とベーシックな内容の2級があって、女性特有の月経課題を中心に、基礎データ、医学、運動生理学、栄養学、アンチ・ドーピング、ストレングス&コンディショニングとケア、コミュニケーションなど7つの分野から出題されます。アスレティックトレーナーの分野やジェンダー、セクハラ、パワハラにも触れていて、指導者の方がどういう声がけをしたら良いのかという内容も入っています」

――マネジメント職の人が受けるのも良さそうですね。

「男性が女性の部下にどう声をかけていいかわからないという悩みはすごく多いんですよね。全然知らないという人もいますし、知識はあっても声がけの仕方がわからないとか、声がけするのが怖いとか。日本では生理休暇の取得率が1%という調査結果がありますし、スポーツの現場でも男性指導者に知識がないから相談しないということも聞きます」

――今後への思いを聞かせてください。

「今の日本では、女子学生たち自身の知識が不十分なうちに月経が始まって、大体の場合は正しい知識を得る機会がなく大人になっていきます。そうではなく、女性は自分の体のことを知ってほしいですし、指導者や家族の方々にも一緒に学んでいただくことで月経がひとりひとり違うという共通認識を持ってもらいたい。第三者が間に入ることはそういう面で活きると思うんです。特にこれからトップを目指すような選手であれば、指導者も知識を持ってほしいと思っています」

――女子学生アスリートやその周りにいるすべての“当事者”が正しい情報を知ることが重要ですね。

「注意したいのは、この情報が良いからこうしましょうというのではないということ。情報を持つことで女子学生アスリートが選択肢を持てることが大事です。最終的には教育の中に入って、それをみんなが伝えられるようになってほしいというのが私の願い。そしていつかは、『1252プロジェクト』がなくなって、当たり前のことになっているのが理想ですね」

伊藤 華英Hanae Ito

1985年1月18日、埼玉県生まれ。高校時代から頭角を現し、100m、200m背泳ぎで日本新記録を打ち立てるなど活躍。2008年には北京オリンピックに出場し、100m背泳ぎで8位に入賞。2012年ロンドンオリンピックに出場し、同年10月の国体を最後に現役引退。引退後は、順天堂大学大学院にて精神保健学を専攻。理論とアスリートとしての経験の両面から、講義・講演を行っている。

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