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朝倉未来「大晦日は必ず出るという考え方は古い」衝撃の敗戦から4カ月、キックルールのYA-MAN戦を決めた本当の理由《単独インタビュー》 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2023/11/18 11:00

朝倉未来「大晦日は必ず出るという考え方は古い」衝撃の敗戦から4カ月、キックルールのYA-MAN戦を決めた本当の理由《単独インタビュー》<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

『FIGHT CLUB』カード発表記者会見後、インタビューに応じた朝倉未来

「ファンの声が大きい。みんな視聴者に踊らされてる」

 ファン、視聴者が演者側の選択を左右できると思っているのではないか。そんな危惧があったようだ。「ファンがやるなと言ってきたから(YA-MAN戦を)受けた。俺は自由にやりたいんです」とも。あえて流れに逆らう必要があると考えたのだ。インタビューでは、さらに突っ込んだ言葉を聞かせてくれた。

「今はファンの声が大きいですよね、時代的に。でも主人公はこっちなんで。それはみんなに言いたいです。選手にも芸能人、有名人にも。みんな視聴者に踊らされてるというか、見る側の価値観を押し付けられてないかなって。もともと、本人の個性があったから人気が出たはずなのに。自分の選択は自分でしたほうがいいですよ。

 もちろん僕も、YouTubeで視聴者の意見を取り入れることがあります。でも全部言うこと聞いてたら自分じゃなくなる。ファンが求める“朝倉未来”になる必要はないですから。だから“YA-MANと試合するな”と言われても試合するし、“大晦日は絶対試合しろ”みたいな声も関係ないですね。俺は俺のタイミングで試合します」

ケラモフ戦からの“再起戦”ではない

 YA-MAN戦を決めた理由については「興味本位」という言葉もあった。ケラモフ戦からの復帰、再起という意味の試合ではないのだ。MMAでの負けはMMAでしか払拭できないと未来は言う。といって、この「興味本位」は単に軽い気持ちというだけではない。

「俺とYA-MANがオープンフィンガーグローブの立ち技ルールでやったら面白いでしょう。興味本位というのは、オープンフィンガーグローブで立ち技でやってる連中はどれくらい強いのかっていうことです」

 MMAとキックボクシングでは、同じ打撃でも距離感をはじめ技術が違ってくる。ボクシンググローブの大きさならブロックできるパンチも、オープンフィンガーグローブではガードをすり抜ける可能性がある。タックルがあるかないかで距離感も変わる。前のめりにラッシュをかけると組みつかれるリスクが発生するのだ。

 言うまでもなく、朝倉未来は“MMAのストライカー”だ。では寝技に持ち込まれることがないキックルールでの彼は、どんな強さを持っているのだろうか。立ち技のスペシャリストであるYA-MANと闘って、しかし使い慣れたオープンフィンガーグローブ着用で、どういう闘いになるのか。

「俺の10割の打撃で、YA-MANは前に出られるのかな」

 そうした面も含めた「興味本意」だ。それを“探究心”と言い換えることもできる。BreakingDownにしても、根底には“1分という短時間では必要な技術、強さの基準が変わるかもしれない。アマチュアがプロに勝つ可能性もあるのではないか”という実験的なテーマがある。

「総合格闘技の選手は、あんまり(フィニッシュへの布石のために打つ)捨てパンチで攻撃を散らしたりしないんですよ。全部10割の力で打つ。俺の10割の打撃で、YA-MANは前に出られるのかなと。それでも前に出てきたら面白くなるし、KOになるでしょうね。最後まで打ち合っても面白いですし。

 逆に総合だと打撃が単発になりやすい面もあります。キックルールだと組まれる心配がないので、コンビネーションが出しやすいですね。総合の試合とは違って手数とかバリエーションが増えると思います」

【次ページ】 「ケラモフに負けた時は自分にガッカリしました」

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