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「世界水泳メダル2個も問題だが…」競泳日本代表に今、何が起きているのか? コーチ「20年前に戻ってしまった」のコメントが示す“重大な課題” 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byJIJI PRESS

posted2023/08/03 11:01

「世界水泳メダル2個も問題だが…」競泳日本代表に今、何が起きているのか? コーチ「20年前に戻ってしまった」のコメントが示す“重大な課題”<Number Web> photograph by JIJI PRESS

福岡で開催された世界水泳。競泳日本勢はまさかのメダル2個に終わった。写真は銅メダルを獲得した本多灯

今大会は、「日本の現状通り」の結果だった

 大会では10個の世界新記録が誕生するなど好タイムも目立っただけに、日本の選手の記録の伸び悩みがより際立つことになったが、大会の前から、出場選手それぞれの自己記録からすればメダルラッシュなどは考えにくい状況にあった。メダルを確実に狙っていける立ち位置の選手は多くなかった。だからある意味、「日本の現状」通りの結果だったと言ってよいのかもしれない。

 でも自己ベストを出せた選手が限られていたこと、選考会の記録に及ばなかったことは、世界選手権で本来の力を発揮できなかったか、調整に問題があったか、つまりは大会への過程や試合に臨む姿勢が整わなかったことを意味している。メダル云々よりもそこに問題がある。

 さまざまな分析もすでになされている。4月の日本選手権と世界選手権との間隔が空きすぎているという意見、コロナ禍の影響もあり海外で試合をする経験が少なかったという見方。さらには、世界選手権に出場すること自体を目標にしていた選手も少なくなかったのではないかという指摘、そもそも若い世代の台頭が日本は少ないという声もある。たしかに今後を見据えると、これらの点は大きな課題である。

日本の競泳は、「チーム化」で強くなってきたが…

 同時に、平井氏のコメントには気になる言葉があった。

「コーチや選手が個人で頑張っている感じで、20年前に戻ってしまった」

 コロナ禍のもと、代表合宿の機会が減り、今年度も限られてきた状況。そのため各所属先での強化に比重が置かれたが、それは日本が代表を「チーム化」することで強くなってきた歴史と逆行する動きでもある。

 個人競技であっても、いや個人競技だからこそチームにならなければいけない、という方針が打ち出されたのは、当時史上最強と呼ばれる中で臨んだ1996年のアトランタ五輪でメダルなしに終わった後からのことだ。

 要因を分析する中で、4年に一度の大舞台に選手個々が重圧を抱えて向かってしまい力を出せなかったこと、皆がばらばらで選手とコーチの間の風通しもよくなかったことなどが挙げられた。

【次ページ】 日本競泳界の“再建のカギ”は?

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