さらに今年はレギュラー陣に多くけが人が出たことで、野手陣の起用も大きく変わった。

　春の大阪大会終盤に2年生の徳丸快晴が左足首を負傷。さらに6月には中堅手の長澤元ら負傷者が続出したことで、練習試合では多くの選手を入れ替えて、メンバーの底上げも図ってきた。

　それでも大阪桐蔭は夏にはきっちり仕上げてくるだろう。

　そう思いながら迎えた初戦（2回戦）の早稲田摂陵戦は、実に苦しいゲームとなった。

スコア以上に「苦戦している」印象の桐蔭

　スコアだけを見れば8-1の8回コールドで圧勝に見えるが、先制した２回の１点は無死満塁か遊遊ゴロ併殺打の間に三塁走者が生還して挙げたもの。4回の1点も1死二、三塁から内野ゴロの間に挙げた1点で、6回はスクイズ、内野ゴロで挙げた2点、7回は1死三塁から左翼への犠飛による1点と、8点のうち5点はタイムリーなしで挙げた得点だったのだ。

　西谷浩一監督は試合後、こんな話をしていた。

「今年は打てないチームなので、もがきながら1点を取っていくしかない。ランナーが出ても打って還すのが一番ですが、まずはどうやって還そうか、そればかりを考えてしまいます」

西谷監督は「今年は打てないチーム」と言うが……？　©Fumi Sawai

　4回戦の東海大大阪仰星戦は、エースの前田がセンバツの準決勝の報徳学園戦以来の公式戦登板となり、そのピッチングにも注目された。

　だが、2回に前田が6番・中村優に左翼超えのソロ本塁打を浴びて先制を許した。3回に1番の笹井知哉の適時打で同点に追いつき、4回には相手のミスが重なって一気に勝ち越した。結果的に10-2で8回コールド勝ちをおさめたが、例年のような“打ち勝った”内容ではなかった。

　ちなみに初戦から準々決勝までの5試合で放ったホームランは、3回戦の淀川工科戦で南川幸輝が放った1本のみ。センバツを制した昨年のチームと比較するのは酷だが、昨夏の府大会では初戦からの5試合で計7本塁打をマークしている。

「夏ですから、どの学校さんも必死。特に3年生は最後ですから、食らいついてくる。ウチの選手も、そんな中でどれだけ粘れるかだと思います」（西谷監督）

【次ページ】　圧倒できなくても……「負けない強さ」