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フルトンも不意を突かれた井上尚弥の右ストレートを激写…“パンチを予見するカメラマン”が明かす決定的瞬間のウラ側「追撃の左フックも超人的」
text by
福田直樹Naoki Fukuda
photograph byNaoki Fukuda
posted2023/07/28 17:05
8ラウンド、スティーブン・フルトンをダウンに追い込んだ井上尚弥の右ストレート。リングサイドで同写真を撮影した福田直樹氏に話を聞いた
リングサイドでフルトンの鼻血を浴びて…
ただ、フルトン選手はガードが非常にうまかった。さすがは2団体王者というべきか、ラウンドが進むごとに「思った以上に堅いな」という印象が強くなりましたね。次第に井上選手のスピードにも順応していきましたし、あのディフェンス技術は称賛に値するものだと思います。
そんなフルトン選手を追い込んだのが、井上選手の細かく多彩なフェイントです。毎回異なるパターンのフェイントを織り交ぜながら、強烈なパンチを打ち込んでいく。撮影しながら「こんな動きもあるのか……」とあらためて驚かされました。カメラマンがこう思うくらいですから、実際に対峙するフルトン選手は精神的にいっぱいいっぱいの状態で戦っていたのではないでしょうか。
加えて、3ラウンドからフルトン選手は鼻血を出していた。そのあたりから、はっきり劣勢になってきたな、と。試合後に周りの人に言われて気づいたのですが、リングサイドで撮っていた僕も血を浴びていました。ロープの外に血しぶきが吹き飛ぶような勢いで、ガードの上からも強烈なパンチを打たれていたということです。
試合後に井上選手が語っていたように、1、2、3、4ラウンドと序盤で明確にポイントを取ったことで、フルトン選手は少しずつ前に出ざるを得なくなりました。その過程で井上選手も5ラウンドにストレートを浅く被弾しましたが、あれでむしろ「ああ、もらっても大丈夫だな」と感じたのではないかと推測します。
7ラウンドの井上選手は少し強引な攻めを見せて、右をいいタイミングでもらいましたよね。フルトン選手につけた3人のジャッジと同じく、初めて「このラウンドは落としたかな」と思いました。ただ、井上選手はそこからギアを上げて倍くらいのパンチを打ち返していた。ダメージはまったく感じられなかったので、あの時点で「判定にせよKOにせよ、勝利はまず間違いない」と確信しました。
