WBCで吉田正尚（レッドソックス）が見せたような、外野手の間に芸術的に落とす大阪桐蔭の選手のヒットはまるで狙っているかのようだった。

「狙ってない。偶然ですよ。そんな打ち方ができるなら、ぜひ教えてもらいたい。今年はほんと打撃力がないチームですので、しぶとく粘ってランナーに出ようと言っていますね」

©Nanae Suzuki

やっぱり強い…「成果が少しずつ出てきた」

　西谷監督としては、いかにして投手力で勝ち切っていくか。今大会はそんな青写真なのだろう。だからこそ、バッティングにおいて非凡な才能がある境や平嶋を投手専任にしてまで、しぶとく勝ちにいこうとしている。

　キャプテンの前田は話す。

「先発でも後ろでいってもやることは変わらないんですけど、後ろでいったら、ショートイニングになるので全力でいける。どこでも起用されてもいいように準備してきました。今日に関しては平嶋がゲームを作ってくれて、野手から攻めていこうと話していた。いいゲームができたんじゃないかなと思う」

　打線は確実に取れるところで得点し、投手陣で勝負していく。

　2人の野手兼任選手を投手にしてまで整えた6人の投手陣は今年のストロングポイントになるだろう。準決勝を控えて前田はこれまで1試合登板のみと理想的な状態。今後の戦いに向けて大きなアドバンテージになる。

「そうするためにたくさんの投手で戦ってきたんで、成果が少しずつ出てきたかなと思う」

　そう語る指揮官の瞳には、大阪の夏を勝ち抜く絵が見えているようだ。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。