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スターダム二冠王者・中野たむの顔面をケーキまみれに…白いベルトに挑む23歳・MIRAIの覚悟「ずっと舐め腐ってきているんで」 

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原悦生

原悦生Essei Hara

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posted2023/06/30 17:12

スターダム二冠王者・中野たむの顔面をケーキまみれに…白いベルトに挑む23歳・MIRAIの覚悟「ずっと舐め腐ってきているんで」<Number Web> photograph by Essei Hara

二冠王者・中野たむの白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)に挑むMIRAI。6月25日には、中野の挑発に強烈なラリアットで応えた

自分自身の「弱さ」と向き合ったMIRAI

「自分の中で進んではいるけれど、そう簡単に取れるベルトじゃない、というのをだんだん感じてきている。『シンデレラを2連覇したのに、ベルトも取れずに』と中野たむや白川未奈にも言われました」

 MIRAIは言葉を選ぶように、間を置いて話した。

「チャンピオンになったら……白いベルトは『感情のベルト』で、スターダムの象徴。自分は今まで白いベルトを巻いてきた人のように『ベルトを持っているのは私。私を見てよ』というのではなくて、『スターダムを見てほしい』と言える、そんな人になりたい。ビジュアルや知名度がみんなより劣っているのは自分でもわかるから、アイドル、アイドルするんじゃなくて、今までと違う存在を目指します」

 さらに白いベルトに対する印象を語った。

「白いベルトはシングルのチャンピオンのベルトなので、強さはもちろん必要。ただ、強さのほかに、感情っていう部分が大きいとは思っている。なんか言い方は変なのかもしれないけど、『弱さがある。けれど強い』みたいなイメージのベルトだと思っています」

 プロレスに出逢ったときから、MIRAIにとって「プロレスラー」のイメージは固定されていた。

「自分の見てきたプロレスラーは、強くてカッコよくて弱音なんて吐かない。自分は、それが理想だと思ってプロレスを続けてきました。だからときどき顔を出す、弱くて泣き虫で自信のない自分が大嫌い。この前の負傷欠場のときは、それで困ったかなぁ……。初めてプロレスをしていて苦しいと思いました。弱い自分を受け入れたくないから。強くてカッコいいMIRAIというプロレスラーでいたいから。結果的に、自分の弱さと向き合うことになりました」

 MIRAIは静かに話を続けた。

「べつに病んでるわけじゃないんですけど、あらためて『プロレスラー』について考える機会になって。強いだけの自分を求める生き方、弱さがイヤだという生き方は、自分自身の可能性を狭めているんじゃないかな、って。弱さを受け入れることで、初めてちゃんとした自分の強さがわかるんじゃないかな、と思うようになったんです」

【次ページ】 「中野たむは訳わかんない。けど、魅力がある」

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