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「日本ではまだ無名だが、サンディエゴでは有名」バスケ界の超新星17歳ロロ・ルドルフとは何者か?〈母は中学時代にNumber登場〉 

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宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

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posted2023/06/27 17:02

「日本ではまだ無名だが、サンディエゴでは有名」バスケ界の超新星17歳ロロ・ルドルフとは何者か?〈母は中学時代にNumber登場〉<Number Web> photograph by nextgenhoops

ハンガリーで開催中のU19W杯に出場しているU19日本代表のロロ・ルドルフ。2006年1月2日生まれの17歳、188cm/79kg。ポジションはPG、SG

 そして、実は身近にも、彼に大きな影響を与えたアスリートがいる。母、礼子さんだ。礼子さん(旧姓・竹内)は若い頃に剣道をやっていて、中学の頃から注目される選手だった。桜美林高校や日本体育大学では何度も優勝を経験したという。専門誌の表紙になったことや、「Number」に写真が載ったこともあった。

「身体的な強さやメンタリティの強さは母から受け継いだんじゃないかな。剣道はメンタルが強くないとできないからね」

 競技は違っても、アスリートとしてのメンタリティや考え方などは母から学ぶことも多い。だからなのか、17歳とは思えないほどのプロ意識を持っている。

「僕は8年生(日本の中学2年)ぐらいで注目されるようになったから、若くして成熟したのだと思う。注目されることは楽しかったけれど、8年生が終わって高校に入ったときに、もっと大人にならなくてはいけないと思ったんだ」

「やるべき努力をすべてやれば、あとのことはついてくる。怠けて毎日、大好きなビーチに行ったり、友達と遊んでばかりだと、練習が疎かになる。でもバスケットボールが大好きだから、何時間でもひとりでシュートしたり、ドリブルをしている。そういうプロセスが大好きなんだ。練習が大好きなんだ」

「捻挫しなければ、MVPを取れたと思う」

 今年の春から夏は、彼にとって大きな出来事が続いている。AAU(夏の間に活動するクラブチーム)では憧れのウェストブルックが所有するチーム、Why Notのメンバーに選ばれ、ナイキが主催するトップサーキット、EYBLに参戦した。さらに、6月上旬にはアラブ首長国連邦のアブダビで開催されたバスケットボール・ウィズアウトボーダーズ(以下BWB)・アジアキャンプ(NBAとFIBAが共催するキャンプ。世界中の有望な選手たちが招待される)のメンバーにも選ばれた。そして今回、まだ17歳の若さでU19日本代表にも選ばれた。

 もっとも、世の中すべてが順調というわけではない。Why Notでは2試合目に捻挫して離脱し、チームもうまくまとまれずに敗退。BWBでは最初のスクリメージ(練習ゲーム)で再び捻挫して残りのキャンプは見るだけに終わり、実力を発揮することはできなかった。

「正直、捻挫しなければ、BWBのキャンプではMVPも取れたと思う」と、アメリカの競争が激しいなかで揉まれてきた自信をのぞかせながら、悔しそうに語る。

 それでも、思うようにいかなかったことをくよくよするのではなく、前に進み、できる中で機会を生かそうとしている。AAUではアディダスが主催するサーキットの強豪チーム、Dream Visionに途中から加わることができた。U19ワールドカップが終わった後、7月5~9日に優勝をかけた試合が行われる。

 BWBキャンプではコート上でプレーすることはできなくても、NBA選手やNBAスタッフと触れ合うなかで学ぶことが多かったという。たとえば、タージ・ギブソン(ワシントン・ウィザーズ)やロドニー・マグルーダー(デトロイト・ピストンズ)に財政面でのアドバイスを聞いたというから、確かに「オールドソウルの持ち主」だ。と同時に、17歳にしてそこまで学ぶ必要があると感じるのが現代のアメリカ・バスケットボールの10代の選手たちが置かれた現状でもある。

「デイミアン・リラード(ポートランド・トレイルブレイザーズ)が、最近はバスケットボールに対する情熱を持っていない人が多いという話をしていた。お金のことばかり考えている。NBA選手もだし、最近では大学選手もNIL(肖像権。学生アスリートが自分の肖像権を使って収入を得ることをNCAAが許可した)があるから、お金を稼ぐために大学に行く選手もいる。でも僕はそういったことには興味ない」

【次ページ】 U19W杯「とにかく試合に勝ちたい」

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