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白鵬が感動、稀勢の里からLINEが…!『サンクチュアリ』泣ける演技が話題の“元力士”が語ったリアル舞台裏「トイレで尻拭く以外はガチ」 

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雨宮圭吾

雨宮圭吾Keigo Amemiya

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photograph byKensho Sawada

posted2023/06/26 11:02

白鵬が感動、稀勢の里からLINEが…!『サンクチュアリ』泣ける演技が話題の“元力士”が語ったリアル舞台裏「トイレで尻拭く以外はガチ」<Number Web> photograph by Kensho Sawada

相撲ドラマ『サンクチュアリ-聖域-』で猿谷役を演じた澤田賢澄さん(37歳)。白鵬や同期の稀勢の里をはじめ、力士仲間からも大きな反響があったという

 相撲界には、将来のために小手先の技ではなく地力を養えという意味で「三年先の稽古」という言葉があるが、制作の舞台裏はまさにその言葉通りだったという。

 澤田がキャスト候補者の一次オーディションに合格した後、まず始まったのは芝居ではなく相撲の稽古だった。半年後、二次オーディションにも受かり、晴れて正式にキャスト入りが決まった。ところが、自分が何を演じるのかが一向に分からない。

「主演は別ですけど、僕らは誰が何をやるか教えてもらえませんでした。話の内容も分からない。僕は撮影が初めてだったのでそんなものかと思っていたら、周りの役者さんはおかしいですよって」

 そんな宙ぶらりんの状態での稽古がしばらく続き、ようやく台本が配られた。

「まずいと思いました。だって泣きのシーンがあるし、何が相撲だよ、芝居メインじゃんって不安になったんです。そこからは恥ずかしがらずに仲間の俳優さんに、役作り、セリフを覚える方法も全部聞いて回りました」

 特に親しくなったのは弟弟子・猿空役の俳優、石川修平。稽古が終わった後は毎回2人で風呂に入り、交代浴している間に澤田は演技について相談し、石川からは相撲に関する質問を受けた。声のイントネーション、感情の出力などは江口カン監督ともやり取りしながら、作り上げていったのが猿谷だった。

猿谷=理想の関取像+千代の国

 現役時代、澤田の最高位は幕下59枚目で関取の地位には手が届いていない。元小結という役柄を演じる上で、そのギャップもまた問題だった。自分には経験のない番付だからどうしようかと考えたとき、身近にいるお手本が参考になった。

「弟の千代の国と、僕の理想とする関取像を融合させることにしたんです」

 澤田の弟・千代の国は32歳となった今も現役を続けている。最高位は前頭筆頭。度重なるケガで何度も関取の座から陥落しながらも不屈の闘志で這い上がってきた姿は確かに猿谷と重なる。

「僕自身は現役時代に病気をした時にすぐ気持ちが切れちゃったんです。でも千代の国は違う。ケガをして、下まで落ちて、それでも諦めず、誰に何を言われようが一人で黙々とやっている。家族も持っているし、その境遇が猿谷に似ているんですよね。だから猿谷の相撲への向き合い方は弟を参考にさせてもらいました」

 さらに、そこに「理想の関取像」をミックスした。それは……。

「あの、稀勢の里なんですよ」

 照れくさそうに明かしたのは、ドラマ公開後にすぐにレスをくれた同期の名だった。

【次ページ】 「お客さんの前では寡黙だけど…」

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