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七冠・藤井聡太新名人20歳「名人という言葉にふさわしい将棋を」、渡辺明らトップ棋士の“藤井将棋評”「そこまで行くことが…」

posted2023/06/02 11:04

 
七冠・藤井聡太新名人20歳「名人という言葉にふさわしい将棋を」、渡辺明らトップ棋士の“藤井将棋評”「そこまで行くことが…」<Number Web> photograph by 日本将棋連盟

名人戦第5局での藤井聡太竜王。新名人獲得、七冠達成の偉業を20歳にして成し遂げた

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藤井聡太竜王(20)が第81期名人戦第5局を勝利し、史上最年少となる名人位獲得、さらに羽生善治九段だけが到達した「七冠」を成し遂げました。この快挙を祝して雑誌「Sports Graphic Number」「NumberWeb」に掲載された記事のなかから、棋士たちが見た「藤井聡太評」や写真を紹介します。(初出以降は段位など省略)

<名言1>
「今、藤井竜王にはどんな世界が見えているのか?」、その境地を体験してみたいです。
(中村太地/NumberWeb 2023年4月27日配信)

https://number.bunshun.jp/articles/-/857316

◇解説◇
 藤井聡太竜王が「最年少名人」の座へとたどり着いた。

 2023年5月31日、6月1日にわたって長野県高山村の「藤井荘」で行われた第81期名人戦第5局、後手の藤井竜王は渡辺明名人(39)に勝利し、今シリーズ4勝1敗で名人位を獲得した。

「序盤で失敗してしまって苦しい局面が長かったと思うのですが、(70手目の)4六角から勝負手気味にやっていって、それが結果的に……そのような形に持って行けたのかなと思っています」

 対局直後の会見で藤井は一局をこのように語った。2016年末のプロデビューから6年半、最年少名人と羽生善治九段以来となる「七冠」制覇は、将棋界の歴史に残る大偉業となった。

 将棋界において最も古い歴史を持つ「名人」。古くは徳川家康によって初代大橋宗桂が指名されたのをきっかけとした「家元制」で、その後1930年代に実力制となり、現在も続く「順位戦」が整備されていった。

何度振り返ってみても、こちら側にチャンスはなかった

 藤井が獲得した「名人位」に挑戦する権利があるのは、順位戦の頂点にある「A級」に在籍する棋士10人のみである。

〈第82期順位戦A級に参加する棋士〉
渡辺明九段、広瀬章人八段、豊島将之九段、永瀬拓矢王座、斎藤慎太郎八段、菅井竜也八段、稲葉陽八段、佐藤天彦九段、佐々木勇気八段、中村太地八段

 タイトル獲得経験者、そして20~30代の実力派棋士がズラリと並ぶ。その中で前期、自身初となるA級昇級を決めたのが35歳の中村だ。

「対局を想像すると背筋が凍ります(笑)。とはいえ彼らと戦うことで素晴らしい棋譜を残し、そして勝ちを積み重ねることこそがプロ棋士としての使命と思うので」

 昇級を決めた直後のインタビューで中村はこのようにも話している。ただその一方で、2021年3月の順位戦B級2組最終局で藤井と対局した経験を持つ中村は、藤井(当時二冠)との対局について「“対局中は自信がなかった”という風におっしゃってはいたんですけれども、何度振り返ってみても、こちら側にチャンスはなかったのです。そこに、藤井二冠の懐の深さを感じました」と感想戦での偽らざる感覚を口にしていた。そういった経験があるからこそ、将棋を深いところまで突き詰める藤井に挑みたい――という気持ちが浮かび上がることは自然なのだろう。

 超ハイレベルな将棋が繰り広げられる中で、中村にとっても〈藤井名人への挑戦権〉を手に入れるための戦いが始まる。

【次ページ】 藤井さんと戦うことが1つのモチベーションに

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