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高橋大輔は“2度目の現役生活”で「自分で自分をほめてあげられるようになった」 本人が明かした1度目の「嫌な気持ちでの引退」からの変化 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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photograph byAsami Enomoto

posted2023/05/05 17:01

高橋大輔は“2度目の現役生活”で「自分で自分をほめてあげられるようになった」 本人が明かした1度目の「嫌な気持ちでの引退」からの変化<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2人そろって引退会見をおこなった村元哉中・高橋大輔の“かなだい”ペア。高橋から語られた引退の理由は長年苦しんだ「右膝のケガ」だった

 ただ、右膝が怪我する前の状態に戻ったわけではなかった。2012-2013シーズンから状態が思わしくなく、それでも練習を重ね、試合に臨んでいた。

 そして2013年11月、再び試練として高橋を襲ったのが右膝の重い怪我だった。

「何回も心が折れました」

 怪我を負いながらも全日本選手権を闘い、ソチ五輪を目指す中、大舞台を前にしての大きなアクシデント。心が折れてしまうのも無理はなかった。

自分に自信をなくしてスケートをすること自体も…

 それでも気持ちを奮い立たせた。ソチでの試合を前にした時期には、膝から水を抜くなど懸命に治療と調整を行った。そして6位入賞で大会を終えたが、折れても立ち上がったその過程はアスリートとしての真価を十分に示していた。

 ただ、その代償は大きかった。翌月の世界選手権は欠場を強いられた。その後引退を選択したが、当時の心境を振り返って、5月2日の会見ではこう語っている。

「世界選手権に出場する予定が出場することができず、そのまま引退をしてしまったという感じで自分の中でもすっきりしないというか、特にシングルの引退のときの後半2年間は、自分に自信をなくしてスケートをすること自体も嫌な気持ちでの引退でした」

 実際、引退を受けて行われた2014年10月の記者会見での言葉や表情もどこか悔いや無念さをうかがわせた。たしかに心に傷は残っていた。

すごく前向きになっていく自分が出てきました

 今回も、右膝の状態が1つの契機となった点では似ている。でも、受け止め方は異なる。

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