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朝倉未来がRIZIN牛久戦後に語った「彼は詐欺師ですよ」その言葉には続きがあった…“逆ブレイキングダウン”的勝利に感じた“格闘家・朝倉未来”の本質

posted2023/05/01 17:02

 
朝倉未来がRIZIN牛久戦後に語った「彼は詐欺師ですよ」その言葉には続きがあった…“逆ブレイキングダウン”的勝利に感じた“格闘家・朝倉未来”の本質<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

RIZIN LANDMARK 5にて牛久絢太郎との対戦中に笑みをこぼす朝倉未来

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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RIZIN FF Susumu Nagao

 デジカメの液晶モニター越しに「朝倉未来カッコいい……」と思ってしまった。

『RIZIN LANDMARK 5』(国立代々木競技場第一体育館)の前日計量イベント。フェザー級規定体重の66kgをクリアした未来は、対戦する牛久絢太郎と向かい合う。

 相手に顔をグッと近づけて睨みつけ、同時にニヤリ。笑顔なのだが、見ていて怖さも感じるような表情だった。ゾクッとするような凄味、あるいは色気があると言えばいいだろうか。彼は闘いに臨む時間を心底、楽しんでいた。

1年4カ月ぶりのMMAマッチ

 牛久戦は、1年4カ月ぶりのMMAマッチだった。昨年はフロイド・メイウェザーJr.とのエキシビションのみ。大きな話題になったが、公式戦ではない。キャリアがあるだけに今さらブランクは関係ないと本人は言うものの、見るほうとしては「久々に未来の“本戦”が見られる」という感覚だ。

 メイウェザー戦はフリーウェイト(体重規定なし)だったから、きっちり減量して仕上げたのが16カ月ぶりなのは間違いない。シェイプされた肉体に「やっぱりこうじゃなくちゃ」とも思う。未来自身も、大会2日前のインタビューで減量について語っていた。

「今は自由な身というか。人にあれやれ、これやれと言われることがない。そういう中で(減量という)制限のある生活をすると、幸せの基準値が下がりますね。我慢するのっていいなと。今の立場だからこそ、そう思いますね」

試合中にこぼれた笑み「ワクワクしました、久しぶりに」

 ファイターとしてのし上がっただけでなくYouTuberとして、また“1分間格闘技”ブレイキングダウンのプロデュースでも大成功を収めた。“格闘技で食えるようになる”ことを目指す選手も多い中で、金銭的には何も困らない。だからこそ、あえてする「我慢」に充実感がある。

 4.29代々木大会では、朝倉未来vs.牛久絢太郎とともにダブルメインイベントが組まれた。フェザー級初代王者で、未来と1勝1敗の斎藤裕が、成長著しい平本蓮と対戦。この2試合は、フェザー級トップ戦線における事実上のトーナメントだ。敗者が大きく後退するサバイバルでもある。

 勝って得られるものと負けて失うものの差が極端に大きい試合。緊張感の中で心も体も研ぎ澄まされて、思わず笑みがこぼれる。大歓声の中でケージに入る瞬間、客席へ振り返って拳を掲げた時の顔は落ち着き払っていた。そして試合中、正念場の最終3ラウンドにまた笑顔。

「相手と向かい合った時、高揚感がありましたね。ワクワクしました、久しぶりに」

【次ページ】 何度も引き込みを使った牛久の真意

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