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フワちゃんのプロレスは“芸能人の挑戦企画”を超えた? 美しいフォームと受身、コメントから見えた“真摯さ”「覚悟が決まるまで大口叩かない」 

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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posted2023/04/24 17:05

フワちゃんのプロレスは“芸能人の挑戦企画”を超えた? 美しいフォームと受身、コメントから見えた“真摯さ”「覚悟が決まるまで大口叩かない」<Number Web> photograph by STARDOM

プロレスデビュー2戦目、林下詩美に卍固めを決めるフワちゃん

お手軽な“芸能人挑戦”企画ではなかった

 今回のテーマは「勝つこと」だった。「仕事以外はずっとプロレスやってる感じ」というほど練習して臨んだ横浜アリーナのリング。今回も葉月とのタッグだ。対戦相手は林下詩美&天咲光由。

 林下は団体の頂点、ワールド・オブ・スターダム王座を長期防衛したこともあるトップ選手。天咲は“超新星”と呼ばれる新鋭だ。昨年3月デビューだから、フワちゃんと同年デビュー。プロレス界では同じ年にデビューした選手を同期として扱う。毎週、先輩たちに揉まれながら成長してきた天咲にとって、“同期”のフワちゃんは絶対に負けたくない存在だ。

 本人の気持ちに応えて、ということだろう。フワちゃんに対するスターダムの扱いはあくまで厳しかった。もちろん強い選手との対戦、意味のあるカードという部分で扱いはいいけれど、扱いがいいというのは厳しいということでもある。

 たとえば、フワちゃんの周りを強豪選手で固め、力の差のあるマッチメイクでフワちゃん勝利をお膳立てする。そんなやり方も可能ではある。過去、プロレス界ではお手軽な“芸能人挑戦”企画があったのも確かだ。だがフワちゃんもスターダムも、それを望まなかった。

 入場するとトレードマークの自撮り棒で葉月と2ショット。しかしその直後から様子が変わる。表情が硬い。緊張の度合いはデビュー戦以上だったかもしれない。プロレスを一生懸命やっていること、プロレスラーとしての資質があることは前回で分かっている。その上で、今回は勝たなければいけないのだ。試合後、フワちゃんはこう振り返った。

「分かってはいたけどプレッシャーが凄かったです。前回めちゃめちゃ評価してもらって、自分で見ても最高の試合だったから、2戦目となるとどこまで期待されるんだろうって」

フォームの美しさは一級品

 そういう試合で、フワちゃんはまたしても観客を驚かせた。劣勢の展開を、葉月のサポートを得てしのぎにしのぐ。そこから反撃に転じると、新日本プロレスのオカダ・カズチカに教わったミサイルキック。コーナーからのダイビング・ボディアタックも決めた。どちらもやや当たりが浅かったが、フォームの美しさは一級品だ。

 前回同様に“受け”もよかった。真正面から受けて大きく受身を取る。「プロレスは“受け”の競技」と言ったのは葉月だ。受けがよければ、相手の技が引き立ち、試合が白熱する。変に逃げ腰にならないことはダメージやケガの抑止にもなる。

【次ページ】 大技フィニッシュに込められた“意味”

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